第16話
遠くで声が聞こえる。
一日の最後の授業が終わり、ホームルームを経て時刻はあっという間に放課後だった。クラスという割り当てられた場所から脱却し、生徒は各々が選択した場所へと向かいはじめた。
私が教室で帰り支度をしていると、また明日ねと何人にも声をかけられた。男子から学級委員と呼称されることが多い。
名前で呼んで欲しいと思うことはあるけれど、そう呼ばれるのは認めてもらっているのだと実感できて嫌いじゃなかった。昔から誰かのために何かをしたいという気持ちが強かった。クラス委員というのは常に指針を求められる。それは頼りにされるということであり、私の願う人物像そのものだった。
「りーちゃん、一緒に帰ろ」
ちーちゃんが後ろから抱きつくように寄りかかってきた。
「部活はいいの? 昨日もサボったでしょ」
「いいの。私、天才だから」
ちーちゃんはへへんっと自慢気に胸を張った。バスケ部に所属している彼女はもう幽霊部員に近い存在だ。最後に練習に出たのはいつだっただろうか。
「こんな奴がレギュラーなんだからうちのバスケ部は底が知れてるよな」
鞄を肩に提げて会話に参加してきたの柊ちゃんだった。
「いいのよ、初戦敗退常連なんだから」とちーちゃんが口を尖らせる。
「うちと初戦で当たるやつはさぞ楽だろうよ」
たいして興味が無さそうに柊ちゃんは欠伸をする。ちなみに彼は私と同じで帰宅部だ。家でゲームばかりしていて少し心配だった。ちゃんと就職してくれればいいけど。という杞憂はさすがにいき過ぎかしら。
「帰ろうぜ。腹減った」
「りーちゃんも帰るでしょ?」
うん、と私は頷いてみせる。私が部活に入らないのは行事の前になるとやることが多いという理由だが、この二人と一緒に帰りたいからという理由もあった。幼稚園のころから続く私の大事な大事な親友だ。
私は頷いたあとで「でも」と忘れずに付け加える。これは大事なことだ。
「買い食いは駄目だからね」
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