Morning & Night/See You-3

「死んだかもしれないし、どこかで生きて、また人助けをするのかもしれない。どちらでも、俺たちの好きな方の解釈で生きろ、ってことだろうな」

「だったら、私は生きているに決まってる、を選ぶわ」

 それまで倒れていたアキが、倒れたまま決然と呟いた。ゆっくりと、その体を起こしていく。

「これだけあいつのために頑張ったのに、最後の仕打ちが置いてけぼり? 全く救われないわよ。いい加減にして。だから、決めた」

 立ち上がり、仁王立ちに街を臨む。

「私は必ずあんたを見つけ出す! 待ってなさい!」

 その後方で、打ちひしがれていたマキが言った。

「僕は、必ず見つけ出す……。兄ちゃんの敵は、必ずとる」

 アキが後ろを振り返り、マキに挑発的な笑みを浮かべた。こう見ると、マキの方が背が小さい。マキも、強い視線で睨み返した。

「もう、殺しはしない。でも、やっぱり兄ちゃんが殺されたのは、許せない。兄ちゃんは兄ちゃんなりの、夜の守り方があったはずなんだ。それは、裁かれるべきだ」

 マキの後ろに、アラタが立った。両肩に手を置き、アキに対面する。

「俺も、マキ側だ。結局あいつは、あいつの正義で俺たちの夜を荒らした。見つけ出して、ブタ箱にぶち込んでやるよ」

「……意志は買うが、やり方が汚い……。……日本は、法治国家だ……。……放っておけば、また、俺たちの場所を荒らしかねん……」

 シンジロウも横に立つ。

 アキの後ろには、シズカ、トオル、ヤスユキが居た。

「僕は、ヒカルの好きにしていいと思ってる。人殺しはやり過ぎだけど、本当はもっと理由があったんじゃないかな。だから、また会いたい」

「あそこまで覚悟見せられたら、辛いよな。あいつのサポートをしてやれるくらいに、俺たちがならなきゃ」

「だね。僕達は、ヒカルを捜して、助けよう」

 再び、アキを間に挟んで、三人対三人で睨みあう。

「アキは、どっちなんだ?」

 ヤスユキが、腕を組んで訊いた。

「……シュウは、〝ヒカル〟を、糾弾したいのか、それとも助けたいのか……」

「え!? そんなこと言われても。どっちもあるし……」

 アキが振り返って、まず朝の三人に顔を向ける。三人は笑って手を広げた。

「それは、アキが選べばいい。アキには、シュウ、って名前もあるんだろ?」

 シズカに言われて、アキの目が泳いだ。また振り返り、今度はアラタ達に目を向ける。

「俺たちは、来るものを拒まない」

 アキは困ったように眉根を寄せ、首を何度も振って、遂には頭を抱えてしまった。

 そんなアキに、双方から声が掛かる。

「別に、追うのは止めないよ。いいじゃん、好きなように顔を使い分ければ」

「僕らと追うなら、納得できるまで詰めることになるけどね」

 トオルが笑いかけ、マキは厳しく言い切った。

「……来るなら、歓迎する……」

「いいんじゃねえの? ヒカルは俺たちに、好きなように生きることを教えてくれたんだし」

 シンジロウとヤスユキが、笑みを浮かべる。

 アキ、いや、シュウ、いや、彼女は、俯いて、目尻を拭った。煌いた雫が、床に落ちる。

「……ありがとう」

 息を吐くと、顔を上げ、外を見た。闇夜に街の明かりが輝いている。大きく息を吸って、腹の底から、叫んだ。

「絶対見つけ出すからね! その日まで、またね!」

 光が、どこかで煌いた。

〈了〉

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Good Morning & Good Night 門田真青 @satomi_kukuri

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