Evening/Good bye-16


「待てよ」

 向こう側の和やかな時間を遮ったのは、アラタだった。鋭い目つきで〝ヒカル〟を睨みつけ、怒りをぶつけている。

 〝ヒカル〟は振り返り、邪気のない笑みを見せた。

「ああ、悪い悪い。お前たちには、悪いことしたと思ってるよ。でもお蔭で、俺の痕跡を消すことが出来た。感謝もしてる」

 そう、頭を下げた。そのイガグリ頭のうなじを見下ろして、アラタが吐き捨てた。

「違うだろ」

「ん?」

 〝ヒカル〟が顔を上げ、笑顔のまま首をかしげた。

「どうしてそこまでする必要があったのかを、お前はそいつらに語ってない。どさくさに紛れるとでも思ったか? 俺たちを、甘く見るなよ」

 アラタの両脇に、シンジロウとマキが並び立つ。

「……何故、痕跡を消さなければ、ならなかったか……」

「どうして今、〝九頭竜一〟の姿をしているのか」

「俺たちが追った〝ヒカル〟と九頭の関わり。俺たちが真相に辿り着くと、思わなかったのか?」

「……どういうことかな?」

 〝ヒカル〟が、まだ顔に笑みを湛えたまま、言った。アラタが、言い渡す。

「お前は、九頭を殺したな」

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