Evening/Good bye-14
「こいつが、〝ヒカル〟……?」
前方からの声に、三人が固まる。何を言っているのだ。自分たちが見た男は、少なくともこんなに太っていなかったし、もっといい男だったはずだ。しかし、推測が正しいなら、奴らは〝ヒカル〟の味方であり、それが見まごうはずもない。
だが、向こう側も驚いているようだった。理解が追いつかない。
アラタが、九頭を睨みつけた。
「どういうことだ。お前が、〝ヒカル〟を見つけて来い、って言ったんだろう。お前が〝ヒカル〟って、どういうことだよ」
九頭が、にやり、と笑った。その緩んだ顔のまま、嘲笑うかのように、話し始める。
「そうだよ。俺が〝ヒカル〟を探させた。間違いない」
その口振りに、神経を逆撫でされる。
「何でだっつってんだよ!」
「はは」
にやにやと笑うその様子は、余裕しか感じられなかった。
「……お前の、痕跡を、俺たちに、探させていた、のか……」
「お、鋭いねえ。流石宍道」
「……!」
シンジロウが、驚いて目を見開く。九頭は、含み笑いで見つめていた。
「そっちが調べてくるんだから、こっちが調べてる、って何で考えないの? 一回携帯取られたでしょ? そこが甘いところだよなあ。気をつけないと」
そう言って、すっと腕を上げ、マキを指差す。
「篠田真希、父と継母。向洋新、父、母、妹。宍道浩一郎、父と妹」
左から順に指を滑らせ、マキ、アラタ、シンジロウ、と告げていく。
三人の顔から、血の気が引いた。
「どこまで、わかってるんだ」
「うん? 全部だと思った方がいいよ?」
アラタが奥歯を噛み締める。九頭に個人情報を摑まれてしまった。その恐怖に、焦りを抱く。
だが九頭は流し目で三人を見守りながら、体を反対に向けた。振り返った先には、奴の仲間であろう三人がいる。ただ、その三人も、呆然としているようだった。
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