Evening/Good bye-10


 三人は、シュウが振り向いたと同時に、その視線の先に目をやっていたので、その男の存在にいち早く気がついていた。

「……まずい、な……」

 シンジロウが呟き、アラタが頷く。こんなに早く来るとは思っていなかった。手土産としての対面する三人はいるのだが、シュウがその状況を混乱させている。

「さっきからどうなってるんだよ!」

 小さな声で悪態を吐いたのは、マキだ。自分のPCを叩き、頭を掻き毟っている。画面にはここの正面玄関が映っており、何かあればアラートが鳴る設定になっていたのだが、全く機能していない。

「無駄だよ、マキ。多分、それをやったのはシュウだ。細工をしたんだろう。今更どうにかなるもんでもない」

「……どうして、音が響くこのビルで、来るのがわからなかったんだ……」

 首を横に振るマキの横で、シンジロウも疑問を呈した。アラタは目を九頭に向けたまま、それにも応える。

「それも、あれがシュウだとしたら全て説明がつく。俺たちを急襲するために、吸収マットでもあらかじめ置いておいたんだろう」

「それは流石に、僕らが登るときに気がつくでしょ」

「だったら、俺たちが登ってから、あいつらが来るまでの間に、誰かが置いたんだろ」

 アラタが自暴自棄気味に吐き捨てる。

「誰がやるっていうのさ」

「そんなの……」

 マキが呆れたように返し、アラタも応じようとしたところで、ふと、その言葉を止めた。

「どした?」

 マキが顔を覗き込み、表情を止めたアラタを見る。アラタは困惑の表情のまま、正面を見つめている。

「まさか、あいつと……?」


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