(All)Night/6-5

「ねえ、マキの言ってた『そんなとこない』って言ってきたひとりだけどさ」

「ん? 何の話?」

 急に話題を変えられ、マキが聞き返す。シュウは改めて顔を上げ、口を開いた。

「ほら、〝夜のヒカリガオカを守る会〟で〝ヒカル〟がよくいたところを訊いたときだよ。実際、ここがあったわけだから、それを言った奴は、知らなかったか、噓か、どっちかにならない?」

「そりゃあ……」

 マキがだからどうした、というように眉根を寄せたところを、シンジロウが引き取った。

「……つまり、そいつは、〝ヒカル〟の味方、ではないか、ということか……」

「そう。わざわざ知らないことを否定しないでしょ? つまり、それは噓で、〝ヒカル〟の居場所を、知られたくなかったんじゃないかな」

「じゃあそいつに情報を流せば、〝ヒカル〟は食いつくかも?」

「可能性は、上がるんじゃない?」

「結局、来なかったときの対策にはなってないけどね」

「いや、せめてこの味方が来たら、そいつを本当に〝餌〟にできる」

 アラタの言葉に、三人が顔を向けた。非難の色が浮かんでいるが、アラタは気にする様子も無い。

「〝ヒカル〟と会わない限り、俺たちはあの場所を守れない。そうだろ?」

 三人は何か思うことはありそうながらも、神妙に頷き、反論することはなかった。

「じゃあ、〝夜のヒカリガオカを守る会〟のHPから、さりげなくそいつに情報を送ることはできるか?」

「できるよ。もうやってる」

 言いながら、マキがノートパソコンを取り出し、キーを弾いている。

「そいつの名前は?」

 ついでのようにアラタが訊いた。マキも、ついでのように叩きながら応えた。

「〝セイ〟だってさ」

「せい、ねえ……。聖か、正か、はたまた性か……。どちらにしろ、〝ヒカル〟と結びつきそうな名前だ」

「そうかな?」

「……それは、こじつけ、じゃないか……?」

 シュウとシンジロウに言い返され、アラタは少し頬を膨らませた。

「何だよ、皆否定的だな。ま、いいや。じゃあそれを仕掛けたら、九頭に連絡して、その前に再集合だ」

「何時?」

「九頭を呼ぶのがいつもの時間として、夜の七時とすると、集まるのは五時頃かな。〝ヒカル〟に伝えるのもその時間で」

「了解」

「わかった」

「…………」

 最後にシンジロウが黙って頷き、四人は誰ともなく同じ方向に視線をやった。丘の上から、街が見下ろせる。

「昨日の夜から、疲れたよ。一旦、おやすみ」

 アラタが、手を振った。

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