(All)Night/6-4

「〝ヒカル〟から、九頭も逃げてる、ってこと?」

 マキの質問を受け取り、アラタが続ける。

「ああ、多分な。だが業を煮やして、俺たちの前に姿を現した」

「……〝ヒカル〟を、誘き出すため……」

 シンジロウが呟き、アラタが頷いて、言った。

「そう。〝ヒカル〟と同じような年代の俺たちが、偶然〝ヒカル〟を追っていた。これを使わない手はない。〝ヒカル〟は九頭から自分が追われていることを自覚しているだろうから、見ず知らずの奴らが来ても、念のため確認はしたくなるはずだ」

「そこで、同年代の僕らだったら、警戒心も薄くなる」

「そうだ。だから九頭は、いずれ〝ヒカル〟は俺たちに接触してくるか、少なくとも遠巻きに見に来るだろう、と考えているんじゃないか」

「……九頭は、罠を張ろうと、している……」

「多分。そこで、問題だ。俺たちは、九頭をとるか、〝ヒカル〟をとるか」

 アラタが、手を広げた。まず、右手を上げる。

「九頭をとる場合、何も考えずに調査を続けてればいい」

 そして左手を上げる。

「〝ヒカル〟をとる場合、九頭より先に、こちらにコンタクトを取る必要がある」

「僕は、真相がわかればどっちでもいい」

 マキが目を光らせる。シンジロウは、目を瞑って静かに答えた。

「……俺たちの目的は、あそこを、守ることだ……。……そのためには、真実を、知る必要がある……」

「まずは会ってみないことには、わかんないんじゃない?」

「わかった」

 最後にシュウの答えを受け、アラタが頷いた。

「じゃあ〝ヒカル〟に対して、俺たちが罠を張ろう。九頭を呼び出すんだ」

「その情報が〝ヒカル〟に渡れば、〝ヒカル〟も九頭……を追ってるんだから、必ず来るはず、ってことだね?」

 マキが訊く。

「……後はその時間をずらして、どちらを選ぶか、決めればいい……」

 シンジロウが得心したように頷いた。アラタが肩を竦める。

「そ。どうだ?」

「問題は、〝ヒカル〟に九頭が来ることをどう伝えるか、だよね。〝ヒカル〟が来なかったら、僕達九頭相手にどうするのさ」

「そりゃ、今の進展具合を報告するしかないだろ」

「期限切られて脅されてるのに? 馬鹿にしてる、って、またぼこされるよ」

 マキが手を広げて抗議する。アラタは口を尖らせ「じゃ、どうしろっていうんだよ」と少々不満そうだ。

 そんな中、シュウがぽつり、と呟いた。


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