(All)Night/6-3

「ん? それがどうした?」

 アラタが寄って、その写真を手にとる。

「これは……」

 アラタが絶句して、シュウを見た。シュウは、黙って頷く。

「何? どうしたの?」

 マキが眠いのか苛立ちながらシュウの元に歩み寄り、写真を奪い取った。そして、それを見て、ずっと細かった目を見開く。

「えっ……!」

「……どうした……」

 今まで黙ってみていたシンジロウも、ついに訊ねると、マキは黙って写真をシンジロウへと向けた。

「……!」

 それを見て、シンジロウも衝撃を受ける。

「……これは、あの男、か……?」

 そこに写っているのは、彼らを痛めつけた、あの、ヤクザの男だった。しかも、彼らを痛めつけたあのビルだった。最近の写真だ。アラタが代表して、頷く。

「そうだろうな。どう見ても、あの男、九頭竜一だ」

 どうしてか、ただの写真なのに禍々しく思えてくる。場所の思い出が起因しているのだろうか。マキは写真を床に落とし、シュウに訊いた。

「これ、どこで見つけたの?」

「ここ。そこの陰に、挟まってた」

 シュウが柱を指差し、アラタが頷く。

「ここが、〝ヒカル〟の場所だったか」

「……そう、だろうな……。……偶然、この写真があるとは、思えない……」

「ってことは、〝ヒカル〟はこの場所に?」

「だろうな。でも、最近の目撃証言はないんだから、朝とか、目立つ時間には来てないんだろう。今後も、来るかどうか……」

「じゃあ、今回の調査は空振り?」

「いや、それも、違う」

 アラタが首を振る。

「これで、〝ヒカル〟が九頭を追っていたことがわかった。しかし同時に、九頭も〝ヒカル〟を追っていた。これは、どういうことだと思う?」

「? どういうこと?」

 アラタの質問に、シュウが首を傾げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る