(All)Night/6

(All)Night/6-1


 夜が、足音を立てて去ってしまった。逃げ出したのは、朝の光が燦々と顔を出したせいだ。

 そんな太陽を憎らしげに目を細めて眺めながら、アラタは大きく欠伸をした。

 彼らにしては珍しい、いや、初めての朝での集合だった。夜の闇が隠してくれるのとはまた別の、違った顔がそこにはあった。

 アラタは、思いの外青白く病的ですらある。実はハーフなのかもしれない。

 シンジロウは隠されていた肉体がより露わになり、その筋肉が何に由来するのかを想像させられると共に、若々しい肌と幼い顔つきに、同年代であるということを思い出さされる。

 マキは、夜に見るよりも細く、小さく見えた。

 逆にシュウは、夜に見るよりも健康的で、少し大きくすら見えた。大き目のパーカーを頭まで被っているせいもあるかもしれない。

 そんな彼らが集まったのは、一旦戻ってからすぐの朝方だった。誰も寝てなどいないだろう。

 あの後、ヒカルが毎朝行っていたような場所が無いか、調べ、考えた結果、通っていた高校の近くであることに間違いはない、という結論に至った。

〝天使応援団〟の過去情報提供掲示板を見るに、今日はいた、いなかった、などの情報交換が行われていたことから、学校に居るときは基本的に無遅刻で来ている、ということがわかったからだ。ならば、学校からそう遠くないだろう。

 そこで、早朝の校門前に集合していた。ここから、〝ヒカル〟の足跡を探そう、というわけだ。

 だが何の指標もない中で探すわけにもいかない。最近〝夜のヒカリガオカを守る会〟としてこの高校の人間ともコンタクトを取っているらしいマキが、パソコンを開いた。

「それとなく、〝ヒカル〟がよくいたところを知らないか、って訊いてみたんだけど、どうも朝早くに来てて、急に路地から出てくることが多かったみたい。なんか一人だけそんなところない、とか言ってきたけど……」

「逆にそいつが怪しいな」

「でしょ? だから、やっぱりここら辺を調べるのが正解だと思う」

 そこでふう、とマキは息を吐くと、パソコンを閉じて座り込んでしまった。朝に異様に弱いのだろうか。しかし、表情は真剣そのものだ。

「一体〝ヒカル〟は、あいつは、何者なのか。僕は、それが知りたい」

 それに目顔で頷きながら、アラタが白い顔をふたりに向けた。

「じゃあ手分けして、探そう」

「……何を、探せばいいんだ……」

 シンジロウが当然の疑問を呈す。アラタは頷いて、口を開いた。

「レミの話を鑑みれば、〝楽しい〟場所があるはずなんだ。それは景色か、人間かわからないけど、何かがあるはずだ。それは、きっと〝ヒカル〟に通じる何かだと、俺は思う。ちょっと曖昧だけど、それを見つけられないかな」

 アラタの言葉に、ふたりは暫し悩む。シンジロウは顎に手を当て、シュウは腕を組んでいたが、やがて顔を上げ、頷いた。

「とにかく、探すしかないもんね」

「……やろう」

「じゃあ、この高校から、北は山だから置いておいて、東西南を手分けして探していこう。マキは、ここで俺たちからの報告をまとめてくれ」

「オーケー」

「じゃ、こっちに行くね」

「……俺は、西に……」

「俺は、南かな。とりあえず、一時間後に」

 頷きあって、三人がわかれた。

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