Morning/6-5

「ただ、女の子を救うために動いていたヒカルが、わざわざ嵌まってしまうようなことを助けるとは、僕には思えないから、これは九頭のじゃないかと、僕は思う」

「そうかな」

 アキが、希望をもたらすようなシズカの言葉に、すぐさま反応する。

「だって、女子と入っていくのを見られたのは、ヒカルでしょ? 九頭の写真は、あいつひとりだった。可能性は、ヒカルの方が高いじゃん」

「そう、ネガティブに考えるない方がいい。クスリを売ってたのは、明らかに九頭の方だし、交換条件にやるなんて、ヤクザの考えそうなことじゃないか」

 シズカが、フォローする。だがアキは、頑なに首を振った。

「そんなの、信じられないよ!」

 三人が、黙ってしまう。

「これだけ探して、私たちの知らない顔があって、どうして信じられるって言うの? もう私、疲れたよ……」

「僕たちがそんなこと言っちゃあ、ダメだ」

 崩れるアキの腕を摑み、シズカが厳しく嗜めた。アキが、顔を上げる。シズカの鋭い瞳が、きっ、とアキを見つめていた。

「そうだよ、それを教えてくれたのは、アキでしょ?」

 トオルがしゃがみこみ、アキの顔を覗き込む。にっこりと微笑み、顔をかしげた。

「ちょっと疲れてんだろ。最近色んなことあったし。お前は少し休んでろよ」

 ヤスユキが頭の後ろで手を組み、ぶっきらぼうに言った。そしてふらふらとその場を去っていく。その後姿を見ながら、アキが微笑んだ。

「あんたたち、バカだね」

 言葉とは裏腹に、嬉しそうに目尻の涙を拭ったアキは、立ち上がると胸を張り、こう宣言した。

「ありがと! さっきのは演技! あんたたちを試しただけだよ! さ、他に証拠がないか、探しましょ!」

「何だよそれ」とヤスユキは苦笑しながらも、アキに膨れっ面で睨まれると、「へいへい」と頭を掻きながら捜索に戻った。

 シズカとトオルも目を細め、新たに何かないか、フロアを探し始める。

 すると、アキが何かを見つけ、声を上げた。

「あれ? 何これ?」

 それは、薄汚れた文庫本だった。

「結構、読み古されてるな」

「そんなん、あったか?」

 先程までその辺りを探していたヤスユキが覗き込む。

「ヤスユキにはこれがゴミに見えたんでしょ」

「お? それ、馬鹿にしてるか?」

 アキとヤスユキがふざけあう中、シズカがトオルから文庫を受け取り、中を開く。

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