Morning/6-4
「さ、さあ」
ヤスユキがあらぬ方を見上げ、頬を掻いた。
トオルは忍び足でその場を去ろうとしている。
「ちょっと」
アキの冷たく重たい声で、トオルが足を止めた。
「何、って聞いてるの」
「コンドーム、だろうな」
シズカが冷静に答えた。そのコンクリートの床に挟まっていたものは、ピンクのゴムで、伸びて中に干からびた白い物体があるのは、あからさまに使用後、という様子を見せていた。
「何でそんなの知ってるのよ」
「そ、そりゃあ、善良なる男子高校生なら、なあ?」
ヤスユキがトオルに同意を求めるが、トオルは口笛を吹いてそっぽを向いている。
「あ、おい、裏切るなよ!」
「な、何だよ心外な! 裏切ってなんかないよ! だって僕、ほんとに知らないもん」
「噓つくなよ! じゃあ何だ、その態度は」
「別に、何だか怒られそうな雰囲気をふたりが醸し出してるからさあ――」
「うるさい!」
ヤスユキとトオルの言い争いを遮り、アキが叫んだ。ふたりが固まり、俯いて震えているアキを黙って見つめる。
「……いいから、答えてよ。何でそんなものがここにあるのよ」
アキの怒りに、答えられるのはシズカしかいなかった。平然と、その物体を見下ろして答える。
「ここで、したんだろうね」
「誰が」
「考えられるのは、ヒカルか、九頭」
「ふたりがしたの?」
驚いたように目を丸くするトオルに、シズカは思わず苦笑する。
「いや、それは流石にないんじゃないかな。否定はできないけど」
「女とした、っていうなら、どうして」
少し和みかけた空気を、アキが否定する。
「……そうだね、堤さんの言っていることが本当だとすれば、クスリを使って、快楽を得るためのセックスだろう」
セックス、という単語が出てきたことで、傍聴していた男ふたりはぴくん、と肩を反応させた。
「どっちが、やったの?」
「それはわからない」
シズカは首を振り、溜息を吐いた。
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