Morning/6-2

「だな」

「でも、大丈夫かな」

 トオルが心配そうにひびの入った壁を見るが、ヤスユキが胸を叩いた。

「俺たちに任せとけよ。アキとトオルは、ここか、外で待ってたら?」

「いや、行きたい。行かせて」

 ヤスユキの言葉を遮るように速攻でアキが否定し、階段を見定めた。その眼差しに、シズカも頷く。

「皆で見た方がいいと思う。トオルも、大丈夫?」

「……うん。ごめん、わかった。行こう」

 逆にトオルが先頭に立ち、階段へと向かっていく。

 階段は、所々塗装が剝げているものの、当たり前だが作りはしっかりとしていてすぐに崩れる気配は感じられなかった。

 硬いコンクリートを踏みしめながら、一段一段、上っていく。

 硬い音が響く中、まずは二階に辿り着いた。

「各自、手分けして捜そう」

 四人は頷きあい、四方に散る。二階は、仕切りもまだ残っており、オフィスが何個も連なっていた、という印象だった。

 だが、目に付くようなものは何もない。工事の時に残していったのか、釘や銅線などが見つかるだけだった。窓ガラスは、一階同様全て割れていて、風が通り抜ける。

 三階も、同様だった。

 四人は力なく、最後の四階へと、足を向ける。

 最初に、そのフロアに足を踏み入れたのは、シズカだった。だがシズカは、その一歩目で、立ち止まった。思わずその背中に、後ろに続いていたトオルがぶつかる。

「うわっぷ。何?」

 背中から顔を覗かせた。そして、息を呑む。

「どうしたのよ」

 アキがふたりを押し退けて進み、その頭の上からヤスユキも視界を確保した。

そして、同様に目を見開いた。

「こりゃすげえや……」

 他の階と同じく、窓はない。しかし、そのフロアには仕切りがなく、一階のように三面が見渡せた。

 そこから、朝焼けに照らされ、静謐な空気の中に煌いた街が、一望できた。

 彼らはこれを見て、確信した。

 ヒカルは、確実にここに来ている。

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