Night/5-3
「はっ」
期待して損をした、とでも言うように吐き捨て、しかし気配を感じ振り返り、シンジロウが覆いかぶさるように影を落としているのを確認して、溜息を吐く。
「はいはい、わかりましたよ。で、クスリの在り処と〝ヒカル〟の居場所だっけ? そんなの、わかってたらこっちが訊きたいくらいよ」
「心当たりを訊いているんだ。お前が〝ヒカル〟と話していて、何か印象に残るような話や場所のことは、出てこなかったか?」
レミが即座に言い返され、不満げに唇を突き出した。眉根を寄せて空中に視線を漂わす。
「うーん、そうねえ……。確か、クスリを貰って安心してたときだから、あんまり確かな記憶じゃないんだけど……」
「何でもいい」
「気持ちよくて、へらへらしながら、ほっとして、あいつに、『あんたは、こんな風にサイコーっていうか、リラックスする時ってあんの』って聞いたら、うーんと、なんだったかな……」
レミが頭を押さえ、偏頭痛のように顔を歪めた。
「その時のような気分になった方が、思い出しやすいんじゃないの?」
「は? ばっかじゃないの? そのクスリがないから困ってんだ、って話でしょ」
レミがシュウを一喝して、また空中に視線を這わす。そうしてから、目を瞑り、体を揺らした。
「ええっと、そう、それで……『ああ、あるよ』って笑って、それを思い出したみたいに懐かしそうに、少し恥ずかしそうに笑ったんだ。それが珍しくて、でも別に興味ないから、ふわふわしたまま『へー、何?』って訊いて……そう、『ある場所に、毎朝行くのが、楽しい』って……」
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