Night/5-2

 アラタが声を上げる。シュウも、息を呑んだ。マキだけ、不思議そうに首を傾げているが、それはそうだろう。彼だけ、会っていないのだ。

 細過ぎる体に、不似合いのボンテージ。傷んだ金髪に、真っ赤な唇、きつい目。

 そう、クラブで出会い、彼らを嵌めた女、レミと名乗った女だった。

「……話を聞いておいて、損はないだろう……」

「こいつを捜してたのか」

 アラタが問うと、シンジロウは黙って頷いた。

「よく付いて来たな」

「……頼んだ……」

「どこに行っても見つかって、黙って睨まれたら根負けするわよ」

 レミが不貞腐れたように呟き、髪をかきあげた。

「それで? 私に何を聞きたいの?」

「どうして俺たちを騙した。どこまで騙した。〝ヒカル〟はお前にとって、なんなんだ」

「それさ、私が本当のこと言うと思うの?」

 唐突の言葉に、アラタが黙る。その反応にレミは嬉しそうに微笑んだ。

「一回騙されたくらいじゃあわかんないのねえ」

「……本当のことを言うまで、俺がどこまでもお前を追う……」

「わかってるわよ。ちょっと甘ちゃんを嗜めてあげただけでしょ。面倒くさいから訊かれたことは全部答えてあげるわよ」

 どうしてかレミの方が立場が上のようになっている。だが、アラタは何も言い返さなかった。この世界では、騙される方が悪いのだ。戦うことを決意したからには、そのルールにも、則らなければならない。

 アラタは大きく息を吐き、注目を集めた。そして顔を上げ、口を開く。

「いいんだよ、別に。さっきの質問の答えは、重要じゃない。どちらかと言うとあんたを試しただけだ。本当のことを言うかどうか、をね」

「へえ。生意気な口きくじゃない。じゃあ、あんたはどうしてだと思うの」

「俺たちが聞きたいのは、クスリの在り処と、〝ヒカル〟の居場所だ。それに心当たりはないか?」

 アラタはレミの言葉を無視して質問をした。じっと、目を覗き込む。レミもそれに負けじと見つめ返し、口の左端を持ち上げた。

「ふうん、なるほど。当たってても、間違ってても、関係ない、ってことか。今の質問も、当たれば儲けもん、ってくらい、ってことだね」

「まあ、な。でも、当たってたら対価は払う」

「何?」

 思わず聞き返したレミに、今度はアラタが口の両端を持ち上げて答える。

「騙したことを、許す」

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