Morning/5-3
シズカは首を振り、ぽんぽん、とトオルの頭を叩く。
「謝ることはないよ。いい情報じゃないか。別に、それが過去の話だったとしても」
「まあ、最近、って勝手に勘違いした私が悪かったわよ。それは認める。でも、あんな意味深に言われたら、そうだ、って思うじゃない?」
アキが不満げに口を尖らすと、ヤスユキも同調した。
「今はその情報を集めてる時だしなあ。ちょっと、趣味が悪かったんじゃね?」
「ごめん……」
トオルが心底申し訳なさそうに俯くと、さすがにこれ以上追求するのも悪いと思ったのか、ヤスユキは罰が悪そうに頬を掻く。
「ま、気持ちはわかるからいいけどな」
「いや、実際謝る必要ないんだ」
そう言うと、シズカがパソコンを取り出し、三人に見せた。
「これを見てくれ」
そこには〝夜のヒカリガオカを守る会〟と題されたHPが映し出されていた。そしてそこには、ひとりの男の写真が掲示されている。
「これは……」
「ああ、昨日、堤さんが見せてくれた奴だ」
「それと、トオルのヒカル目撃情報が、どう繋がるの?」
「うん」シズカは頷いて、パソコンを一旦自分の方に向け、いじくる。
「トオルの情報は、ヒカルがあるビルに入っていった、という目撃情報だった。そして、この男が出入りしているのが……」
そう言って、パソコンのモニターを再び三人に向ける。
「同じビルだ……」
トオルが呟いた。
そのビルは、確かに一階が開け放たれていて、だだっぴろい何もない感じも、廃れている様子も、トオルの話とそっくりだった。
「やっぱりこの男がヒカルの失踪に関係あるってこと?」
「そんでもって、この男はここに出入りしている、ってこと、か」
アキとヤスユキが、言葉を繋ぐ。
シズカがそれに頷いた。
「そういうことだろうね。僕らは、ここに行く必要がある」
「ここに……」
アキが、唾を飲んだ。ヤスユキとトオルが、画面に顔を寄せる。
「とりあえず、居ない時間狙って行ってみて、なんか手がかりになるものがないか探すか」
「だね」
顔を離し、頷きあう。
シズカが、視線をヤスユキの後方へやった。ヤスユキがそれに釣られて振り返る。ふたりも、それに続き、視線の先を見た。
街が、広がっていた。
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