Night/4-6

「なんだなんだ。楽しそうだな。お前ら、立場わかってんのか?」

 小太りの坊主頭がどうにも小憎らしい。男は、縄で縛ったシュウを連れていた。

「シュウ!」

 男がシュウを突き飛ばし、バランスの取れなかったシュウが三人の下で倒れこむ。

「大丈夫?」

 マキが聞くと、シュウは顎を引き、視線を逸らした。

「ごめん……」

「何がだ。しょうがないさ」

「でも、捕まらなかったら……」

「……いずれ、接触せざるをえなかった……。……お前のせいじゃ、ない……」

「みんな……」

「はいはいはい。友情ごっこはいいから、そろそろ本題に入ろうか」

「本題?」

 アラタが男を睨みつけた。男はへらへらと笑いながら、ポケットに手を突っ込んだ。

「そう、本題。お前らも、死にたくないだろう。それに、俺も無用なリスクを負うつもりもない。充分怖がってくれたし、解放してやるよ」

「……本当、か?」

 四人は懐疑的に男を見る。男はだらしない笑みを浮かべたまま、腕を広げた。

「もちろん。ま、ただしひとつ条件があるけどね」

「そうだろうな。なんだ」

 アラタの瞳を受け、男がいきなりアラタの顎を蹴った。アラタが吹き飛ぶ。

「まったく。いい気になるんじゃないよ。すぐそうなる」

 アラタが口から滴る血を拭いながら、黙ったまま男を睨んだ。男はその視線を受け流し、溜息を吐く。

「いいか、〝ヒカル〟について、一週間以内に情報もってこい。どうせ、俺の知らない情報を持ってるんだろう? それだけじゃ足りないぞ? 派生して、十個くらいは持ってこいよ? ほれ、じゃあ返してやるよ」

 そうして取り上げていた携帯を放り投げる。

「俺の名前と番号を登録しておいた。九頭竜一だ。なんかわかったら連絡して来い。連絡をしなかったら、この街で生きていけないと思え。お前らの番号も、名前も手に入れたから、すぐ追い込みかけられるからな」

 男・九頭は最後に唾を吐いて、ナイフを放り投げると、部屋を出て行った。縄は自分で切れ、ということらしい。

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