Night/4-5
「へ?」
「俺たちのことを知らない、ってことは、あいつは俺たちがあの場所に集まってることを知らない、ってことだ。あのビルを探りに着てたのがあいつだとして、それなのに俺たちのことを知らない、ってことは、あそこに〝ヒカル〟が来ていた、ということを知ってはいても、実際見てはいないはずだ」
「……つまり、あの四階に本当に〝ヒカル〟が居た、ということを、知っている、という事実が、強み、というわけか……」
シンジロウがアラタの言葉に、視線を床にやる。
「ああ、そういうことだ。実際〝ヒカル〟を探しに来た女も見てる。それで行こう。俺たちは、あそこで何人か、〝ヒカル〟に会いに来たのを見ている、ってことにして、そいつらと接触できるのは顔を覚えている俺たちだけだ、って、押してみよう」
じっと床を見つめていたシンジロウが、顔を上げた。
「……そう、だな……。……まだ緩い気もするが、他に手もない……」
「これでダメだった時は、もうそのときだな」
「どういうこと?」
「組にでも入れてもらおう。それで、許してもらうしかない」
「え、僕やだよ」
「わかってるよ。入るのは俺だけだ。それで、手を打ってもらう」
「……そこまで、アラタに、価値があるかどうか……」
「なんだよそれ」
不満げにアラタが唇を尖らすと、珍しく、シンジロウが、ふっ、と微笑した。
「……足らなかったら、俺も、入るさ……」
「そういうことか。悪いな」
アラタとシンジロウが、手を叩く。
「なにそれ。まるで僕が悪者みたいじゃん」
「はは。いや、ほんとにマキはいいんだよ。俺は年上だしさ」
「え、同い年じゃないの?」
「え、年下でしょ?」
ふたりが暫し見詰め合って、笑い出す。
「はは、俺たち、そんなことも知らないんだな」
「まあ、知る必要もないしね」
その言葉に、頷き、温かい空気を共有する。
その時、扉が開いた。
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