Night/4-4
取り残され、部屋には沈黙の幕が下りる。
アラタが床に倒れこみ、天井を見上げた。
「あー、ちくしょう。なんなんだよ、一体」
「…………」
マキは黙ったまま、考え込むように体育座りで膝と膝の間に顔を入れる。だが、シンジロウは胡坐を掻いたまま、その暗い目を決して閉じようとはせず、前を見据えていた。
「……いや、まだ、わからない……」
「何かあるか?」
アラタがそちらに目をやる。シンジロウが視線を合わせ、頷いた。
「……奴は、〝ヒカル〟を探している……。……それは、俺たちの場所が荒らされたことからも、間違いない……。……だったら、〝ヒカル〟に繋がる情報は、少しでも、多く欲しいはずだ……」
「そうか、今のはただの脅しで、結局よりいい条件を俺たちから引き出そうとしてるのか」
「……恐らく、だが……」
「だから、考えとけ、って一旦出て行ったんだな。俺たちから提案させることで、脅迫と言われないようにもしてる」
「……自分からやると言った、としたいんだろうな……」
「言質か誓約書でも書かそうっていうのかよ。卑怯な奴だ」
アラタは吐き捨てながらも、頭を抱える。
「とはいえ、こっから逃げ出すためには、そうするしかないんだよなー」
「……マキ……」
悩み続けるアラタを置いて、シンジロウがマキに呼びかけた。心ここにあらずだったマキは、驚いたように背筋を伸ばす。
「え? 何?」
「……何か、他に、〝ヒカル〟の情報はないか……。……奴が知らない情報を、ひとつでも、持っていれば、交渉になるかも、しれない……」
「ええっと、そうだなあ」
マキは空中に目をやり、考え込んだ。彼らは、ほとんど情報を共有している。持っていない情報があるとすれば、彼が一人でネットに作った〝夜のヒカリガオカを守る会〟に頼るしかない。
ふたりの視線が集まる中、焦るように視線を様々なところにやった。しかし、マキの口は開かれない。
「焦ることはない。ゆっくりでいいさ。俺たちにも、何かあいつが知らないような情報はないかな?」
マキを暫しひとりにすることにして、アラタがシンジロウに話しかける。シンジロウは考え込んだが、こちらも答えを導き出すのには苦労しそうだった。
「……あいつは、僕を知らなかった」
マキが、呟く。諦めたように天井を見上げていたアラタが、その言葉に反応して指を鳴らした。
「それだよ!」
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