Night/4-2

眩しさに三人が俯く中、入ってきた影がいきなりアラタの側頭部に蹴りを見舞った。

「ぐっ」

アラタが頭を床に叩きつける中、影は残るふたりの頭も順番に蹴っていく。

「ぎゃっ」

「くっ……」

 影は蹴り終わると、仁王立ちになり三人を見下ろした。

「まだそんな生意気なこと考えてんのか。まったく、近頃のガキは暴対法やらドラマの影響で、どうも〝本物〟ってやつの怖さをわかってない。しっかり肌に刻み込んでやらないといけないみたいだな」

 しゃがみこんで、蹴られて床に横たわったアラタの前に顔を寄せた。丸い顔に、どんぐり眼。奴だ。その目の中は真っ黒で、何を考えているのかまったくわからなかった。

「いいか? 俺たちは連れて来た以上、特に理由がなくてもお前たちを痛めつける。それは、復讐をしようなんて大それたこと、考えたくもないようにするためだ。お前たちを連れて来たのも、意味なんてない。まあクスリの顧客を増やすくらいにはなるかもしれないけど、ほとんど俺の周りをうろうろするな、という周囲への警告でしかない。わかったら、何か交渉できるかも、だなんて甘い期待はよせ」

「ま、待てよ!」

 アラタが思わず声を上げる。それを見下し、男は立ち上がると、アラタの腹に爪先で蹴りこんだ。

「ぐお」

 アラタがのた打ち回る。それを冷徹に見定めながら、男は言った。

「待ってください、だろ」

 床を転げ回るアラタの顔を踏み、睨みつけてくる眼をじっと見た。徐々に、踏みつける足に力を加えていく。

「くっ」

 アラタの顔が痛みに歪んだ。

「ま、待って!」

 横から、マキが少し顔を輝かせて声を上げた。しかし男はそちらをちら、と見ると、すぐに視線をアラタに戻した。それに、マキが愕然とする。

その間にも、無情に、同じ速度でゆっくりと、アラタの顔に体重が掛かっていく。

「ぐあ……ま、待ってください……」

 アラタが、懇願した。それを見て、やっと足を上げ、ご丁寧にアラタの頬に唾を吐くと、足をどけた。

「粘るんならもうちょっと粘れよ。つまらないなあ。で、何だ? 言いたいことがあるんなら、聞いてやるよ」

 アラタの髪を摑み、ぐいと引っ張り上げ、顔を覗き込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る