Morning/4-6
怜香の言葉を三人は神妙に聞き、話が終わっても暫し俯いて黙っていた。〝ヒカル〟の言葉を噛み締め、解釈しようとしているのだろう。
「……ありがとう、ございました……」
シズカが礼を告げ、三人が立ち上がる。思わぬ言葉を投げかけられ、三人は動揺したまま、俯き加減に部屋を出た。
出たところで、汗だくのアキとはちあう。アキは顔を輝かせ、荒い息のまま三人に駆け寄った。
「ちょっと! どこ行ってたの? ホントきつかったんだから。何で私だけなのよ。ねえ、聞いてる?」
アキが問い詰めるが、三人は項垂れたまま答えられなかった。アキが眉をひそめ、もう一度聞く。
「ねえ、何があったの?」
代表して、シズカが前に一歩出た。
「ヒカルの知り合いだった、って人に話を聞いた。それで、僕たちにはこれまで通りで居て欲しい、って伝言を貰った」
「は!? どういうこと?」
蚊帳の外に置かれていて、いきなり言われた言葉がそれでは、アキが怒るのも当然だろう。アキは表情を厳しいものにして、シズカに詰め寄った。
シズカが、俯いたまま応える。
「ヒカルは、この世界に足を染めてなかったみたいだ。ただ、助けた人をここに紹介してただけで。それで、もし僕たちが来たら、自分のことは気にせず、いつも通りにしていて欲しいって。必ず帰るから、って伝えてくれ、ってわざわざここの人に言ってたんだってさ」
最後の『俺が居ない方がいいこともある』という話は伝えず、シズカは言葉を切った。アキは不機嫌そうに腕組みをして考え込む。
「確かに、あいつの言いそうなことだけど……」
「その人が言うには、ヒカルにとって、〝天使〟じゃなく居られるところは、俺たちのところしかないんじゃないか、だから俺たちには殊更特別に扱って欲しくなくて、気にしないで普通にしててくれ、って言ってるんじゃないか、って……」
ヤスユキが、説明を追加する。
「……何それ」
「俺は、そう言われて、何だか納得しちまったよ。ヒカルを信じてるなら、何も気にせずに、待っててやるのが、俺たちの役目なのかな、って――」
「ふざけないで!」
滔々と語っていたヤスユキが、喋りを突然遮られ、目を丸くする。叫んだアキは、拳を握り締め、荒い息を吐いてた。
「知らない人間が、何偉そうにヒカルを語ってるの? そんでなんであんたたちが簡単に流されてんの? 私たちのヒカルでしょ? 私たちで考えようよ。私たちで決めたことを、大事にしようよ。ヒカルが本当にそう言ってたって、誰が言えるの? 今ヒカルが本当にそう思ってる、って誰が言えるの?」
アキの剣幕に、三人は驚きつつも顔をあげ、唇を噛み締めた。
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