Morning/4-5

は煙の行方を見守るように天井に視線をやった。そして、話を続ける。

「でもね、彼はこう言って笑ったのよ」

 煙草を灰皿に押し付け、苦笑いを見せる。

「『僕はそういったことに興味ないんですけど、興味ある子を紹介してもいいですか?』って。なんて野心のない子、と思ったわ。その純粋さが気に入って、うちに出入りさせるようになったの」

 黙って聞いていた三人だったが、ふとシズカが顔を上げる。

「ヒカルは、ここでスカウトみたいなことをしていたんですか?」

「まあ、やってることはそうね。でも彼がしてたのは、自分が原石を探して、デビューさせる、とかそういうことじゃない。彼が助けた子で、そういうのに向いてそうな子、夢を持たせて上げたい子、こういうのがあるのを知らない子の手助けとして、ここを紹介してたわ。だから、彼自身がこの世界に身を置いてる、ってわけじゃない。わかった?」

 怜香の説明に、三人が納得いったように唸った。

「ヒカルは、やっぱり校外でも〝天使〟をしてたんだねえ」

「別に、俺らに話してくれてもよかったのにな」

 ぽつり、とヤスユキが呟くと、それに怜香がふん、と笑った。

「そう言うと思った。だからヒカル君は、私にあんな伝言を残していったのね」

「どういうことですか」

 素早くシズカが返す。怜香はそれを楽しむように、ゆっくりとまた煙草を取り出し、口に銜えて火を点けた。

「ヒカル君はね、自分がいなくなったら、絶対探しに来る四人組がいるから、来たら対応してくれ、って言ってたの」

「何て言ってたんですか!?」

 三人が、身を乗り出す。怜香は嬉しそうに微笑んで、煙を吐き出した。

「ヒカル君はあなたたちの話をするとき、とても楽しそうにしてたわ。普段からにこにこ笑ってる子だったけど、一年前くらいからだったかな? あなたたちの話をしだすようになって、その時だけは違った。何か特別だったのかしら。ただ、そうやって心配する、普通の友達がいてくれて、私も嬉しい」

 怜香はまた煙草を消し、神妙な表情になって、告げた。

「『大丈夫だ。俺の放課後のことは、これまで通り気にせずいてくれ。必ず帰る。でも、俺がいない方が、お前らにとっていいこともあるだろ? だから、俺がいないうちに頑張っとけよ』」

 言い終えると、怜香は椅子に背を預け、笑った。

「確かに伝えたわよ。私も心配だけど、彼のことだからいずれふらっと戻ってくるわよ。あんたたちは、彼の言う通り、普通に待っててあげたら? 多分、彼にとって、〝天使〟じゃなく、普通でいられるところは、もうあなたたちのところしかないんじゃないかな? だから、変わらずいて欲しいし、そのままで受け入れて欲しいんだと、私は思うわ」

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