Morning/4-3

三人もそれに「こんにちは」と返しながら、誰かと訝る。

 女性は微笑んだまま三人を見つめ、最終的にトオルに顔を向け、訊いた。

「あなたがトオル君?」

「え。あ、はい」

 トオルは驚きながらも顎を引いて応えた。それに満足げに笑みを大きくしながら、女性は壁に背を剝け、アキの方に向き直り、トオルの横に立った。

「電話をくれたの、あなたでしょう? なんとなくわかるわ。でも、皆アキちゃんのことが好きみたいね」

「へ? え、え?」

 トオルがどぎまぎしながらふたりを振り返り、ふたりも慌てながら首を横に振る。それを無邪気に笑って、女性は続けた。

「それで、今日は何の用? ただのレッスンに、三人も付いてこないでしょう?」

 何度も不意をつかれ、完全にペースを見失っている。そんな中、シズカだけは頭を抱えながらも、何とか口を開いた。

「どうしてです? レッスンを受けてみたかったけど不安、という友人についてくるのは、不自然でもなんでもないでしょう。仲が良いので、これでいけそうだったら、親の説得に僕等も加わるつもりなだけです」

 だが女性は、アキのレッスン風景に目をやったまま、首を振った。

「いいえ、ありえないわ。だってあなたたち、ヒカル君の友達でしょう?」

 その言葉に、三人が言葉を失う。女性は相変わらず笑顔で、アキのレッスンを見ている。視線の先には、不器用ながらも懸命に踊るアキがいる。しかし、今はそれを見ているように思えなくなっていた。ただ、視線を隠すために微笑んでいるのではないか。

 女性は微笑んだまま告げた。

「これ以上知りたかったら、着いてきて」

 そして三人を見ることなく扉を開けて出て行く。

 アキを残していくのか。

 三人は顔を見合わせたが、本来の目的はそちらだ。タンクトップに熱心にレッスンをさせられているアキに手を合わせ謝りながら、三人は女性に続き、部屋を出ていった。

「そう! そこでターン! ワン・ツー、ワン・ツー……」

 後ろで元気な声が聴こえていたが、扉の閉まる無情な音共に、それは遮断された。

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