Morning/4
Morning/4-1
四人が集まって、朝の街を歩いていた。今日は休日で、学校はない。自転車で銘々に集まり、駐輪場に置いて、やっと動き出した街中を進んでいた。
繁華街の朝は、学校と比べるとだいぶ遅い。人影も疎らで、午後になると盛況となるのだろうが、まだまだ明るさと静けさがアーケードを支配していた。
広い通りを進みながら、トオルがスマートフォンを見る。
「ええと、そろそろのはず……」
きょろきょろと首を振って周囲を見回し、ビルに掛かっている看板を見つけた。
「あ、あそこだあそこ!」
トオルが指差し、そちらに三人が目をやる。
だが何故か、そこで立ち止まり、それぞれ顔を見合わせた。
「ねえ、ほんとに行くの……?」
「一応、まずは電話とかした方がいいんじゃね?」
「僕たちだけで行って、馬鹿にされないか?」
三者三様に不安を口にする中、トオルが三人の背を押して進み始める。
「はいはい、わかったから、親なんか連れてきても、親にまず、何してるんだ、って言われて終わりでしょ? 電話も、したよ。その結果、今日この時間にアポが取れたんだから。本当に行くの。ほら、歩く歩く」
トオルに押され、渋々と歩み始めた三人は、ビルの前に立ち、その威容を仰ぎ見た。
この街で一番大きい芸能事務所。そこに彼らはやってきていた。ただし、アポイント内容はレッスン見学だ。
「やだなあ……」
「体験レッスン、ほんとにしなきゃダメなのかなあ?」
「とか言って、内心それを見初められてスカウトされたらどうしよう、とか思ってんだろ?」
「そんなわけないでしょ!」
三人がまだぶつくさとやりとりをしている中、さっさとトオルが自動ドアを開けて中へと入っていった。
「ほら、早く!」
慌てて三人が続く。
エレベーターが到着し、四人が乗るが、誰も会話を交わすことなく、階数表示を見上げていた。やがて、目的階に着くと、チン、という甲高い音とともに扉が開く。
まず待ち受けていたのは、白い受付と、そこに座るふたりの美人だった。三人が固まる中、一番にエレベーターを降りて、また堂々とトオルが進み、話しかける。
「すみません、昨日お電話差し上げた牧徹ですが」
トオルが名前を告げると、受付のお姉さんは手元の紙を確認してから、顔を上げ、にっこりと微笑んで告げた。
「お待ちしておりました。本日は体験レッスンでよろしかったですね?」
「はい」
トオルが頷き、エレベーターから出てきて後ろで伺っていた三人が縮み上がる。
「それでは、レッスンを受けられる方はこちらに。他の方はあちらでお待ちください」
「え」
受付の女性が立ち上がり、アキに掌を差し出して移動を促す。
トオルはこっそりと左へと体を移動させ、他のふたりにも指示して、アキと距離をとった。
「え、え?」
アキが驚いて目を丸め、手を伸ばす。伸ばしたところで、受付の後ろの扉が開いた。
「ようこそ! 君がアキか? 歓迎するよ! 君たちが付き添いだね。これだけ愛されているのは、いいことだ」
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