Night/3-7

「罪悪感があるなら、どうにかしといて」

 レミに言い残し、男がその場を立ち去る。レミがアラタを汚らわしいもので見るように蔑んだが、スカートを抑えながらしゃがんだ。

「ねえ、大丈夫?」

 訊いてから、レミが顔を覗き込もうとする。その瞬間、レミの首は大きな掌に摑まれていた。

「や、やめて……」

「ふざけるな。どういうことだ、言え」

 アラタは水を髪から垂らしながら、レミを問い詰める。

 レミは喉を反らし、苦しそうに口を開け閉めしながら掠れた声を出した。

「だ、だって……あいつもいないのに、クスリ無しじゃやってけない、もん……」

「それで、あのチンチクリンに結局昨日話しかけたのか」

「そう、だよ……。あいつ、ああ見えて売人の歴は長いから……」

「ちっ」

 アラタは舌打ちをして、を離した。レミが床に崩れ落ちる。

「あいつはどこに行ったんだ」

 レミは咳をして、それに答えられなかった。苛立つようにアラタが床を踏み鳴らす。

「答えろ!」

「ひっ! わ、わかんないよ……」

「あいつにどこまで教えた。話したことを全部言え」

「そんなこと言われても……」

 レミは俯きながら、服の裾を直そうとする。その腕を取って、アラタが睨みつけた。

「話せ」

「痛いよ……。わかったから、離して」

 それでも離さないアラタに、観念したようにレミが口を開く。

「別に、ただあんたを調べてるやつがいた。三人組だった、ってことだけだよ」

 それを聞いた途端、アラタは腕を離して立ち上がった。入り口へと走り出す。

 奴は、自分に仲間がいることを知っている。そして自分は、奴を尾行してくれ、とふたりに頼んだ。

 携帯を取り出し、シュウに電話をかける。出てくれ、と祈りながら走るが、返答は無い。

 階段を駆け上り、左右に首を振った。

 ――どこだ。

 奴は、ふたりを罠にかけるつもりに違いなかった。シンジロウならまだ何とかなるかもしれない。だが、問題はシュウだ。安全を考えて正面に配置したが、却って仇になったかもしれない。

 その時、携帯が鳴った。

 表示を見る。シュウだ。ほっと胸を撫で下ろし、アラタは携帯をとった。

「もしもし」

――もしもし

しかし携帯の向こう側から聞こえてきた声は、低い、感情の籠もっていない、先程も聞いたあの声だった。

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