Night/3-4
「……また、クラブに行くの、か……?」
シンジロウが、前を歩くアラタに訊いた。三人は路地裏を、人ごみを避けるように歩いている。アラタは月を真正面に、首だけで振り返りながら応えた。
「ああ。でも、もう中には入らない」
「どうして?」
シュウが会話に参入する。アラタは頷きながら、月を見た。
「中で追っても、また前のように撒かれるだけだろう。向こうも法を犯してる。それなりに気をつけてはいるさ」
「……だったら、外で待ち伏せして、尾行するか……」
「そうだな。それが一番だと思う。何か他にあるか?」
アラタがふたりに訊く。シンジロウは黙って首を振り、シュウは暫し顎に指を当てて考え込んだ。
その間、三人は黙々と裏路地を進んでいく。青いポリバケツのゴミ箱を避け、横切っていく鼠を飛び越える。
気がつけばビルとビルの隙間の向こう側で、ネオンが煌いていた。
その境に立って、アラタがシュウを見る。
「どう?」
「うん。まずは、そうしよう。でも、それとは別に、できれば、〝ヒカル〟の情報もまだ手に入れたいね」
「何で?」
「だって、この街を去ったとしても、〝ヒカル〟しか持っていない、売買のルートやクスリの売り方、とかがある、ってことでしょ? それを元締めは探してる。だったら、そこまで手に入れないと」
「俺はそこまでやらなくても、とりあえず締め付けが緩まってあそこが無事ならそれでいいけどなあ」
「マキみたいなこと言わないの! そういう周辺も含めて警察に徹底的に叩いてもらわないと、あんな絶好の場所、また何かに使われるよ?」
「そりゃそうだ」
アラタは息を吐いて、路地から一歩、踏み出した。途端に音の洪水が襲ってくる。
「じゃあ、俺は中で探すから、居たら連絡する。ふたりは、そうだな……シュウが表口、シンジロウが裏口を見張っておいてくれるか? どうせ逃げられるだろうし、そっから尾行スタート、ってことで」
「了解」
「……わかった……」
三人が、それぞれの担当場所に分かれる。
アラタは、クラブの黒服に横目で見られながらも止められず、扉を開けた。
中は外以上の爆音とミラーボウルの照明で、目眩に襲われるほどだ。
ゆっくりとバーカウンターに向かいながら、それとなくフロアに目をやる。
居た。
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