Night/3

Night/3-1


 夜の街は、いつもと同じく煌々と誘蛾灯のように輝き、出てくる人たちを吸い寄せている。その光から離れるように、光る街の中で急に暗くなった一角に、その廃墟ビルはあった。

 いつもの場所に座った四人は、マキからの報告を黙って聞いていた。

 彼は三人がクラブに行った後、そこでサイトを作り、〝ヒカル〟の情報を集めていたらしい。そこで、面白いものが見つかった、というのだ。

「それで、何が面白いもの、だったんだ?」

 アラタがマキに訪ねると、マキは頷きパソコンを弄くった。

「さっきも言った様に、僕は〝夜のヒカリガオカを守る会〟と名乗って、色々な地域コミュニティサイトに出入りしたんだけど、その中で僕に噛み付いてくる奴が大勢いたんだ」

「大勢?」

 今度はシンジロウが聞くと、マキは頷き、それをリストアップしたテキストを見せた。

「そう。何人もの人間が〝ヒカル〟はいい奴だ、って言うんだよね。それで〝天使応援団〟なんてサイトにも誘導させられて、確かにそこにはどっからどう見てもいい奴、がいたよ。あ、写真も何枚かはそこで手に入れられた。多分、僕等が見た奴と同じだと思う」

 そう言って覗き込むようにクリックをすると、画面に爽やかに笑う男子高校生が映し出された。

「どういうことだ……」

 アラタは呟き、顎に手を当てる。

「このビルを使っていたあいつとは、別人物、という可能性は?」

 考えているアラタを余所に、シュウがマキに訊いた。マキは眉をひそめ、困ったようにアラタを見た。シンジロウも、黙ったまま何を考えているのかわからない。

 答えを求められたアラタが、顔を上げ、口を開く。

「もう一度、整理しよう。俺たちが追う〝ヒカル〟と、その〝天使〟と呼ばれる〝ヒカル〟を、比較してみるんだ」

 三人は頷き、アラタに先を促した。アラタは立ち上がり、自分のスケッチブックを取り出して、筆を手に取った。

「まず、俺たちが〝ヒカル〟に気づいたのは、あいつはいないのか、と探しに来た女が始まりだった」

 丁度、暑さがピークを迎え始めた頃だった。廃墟は風通しがいいとは言え、はっきり言って夜でも暑い。そんなところにそれこそ誰も寄り付こうとしないのだが、その日、ふらりと女が迷い込んできて、言ったのだ。

 ――ヒカルは、どこ?

 と。

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