Morning/3-4
「……そうだ、よね」
アキが頷いた。三人は、まだどこか困惑したように黙りこくっている。
「私たち、救われただけで、いや、もしかして今も救われ続けてて、ずっと甘えてたのかな? ヒカルのこと、わかろうとしてたかな? 朝話すだけで、わかった気になってた? 仲いい気になってた? もしかして、私たち、ヒカルを探す資格なんて、ないのかな?」
「落ちついて、アキ! ごめん、僕が悪かった……。そういうつもりで言ったんじゃないんだ。言った自分でも驚いてるくらいで……」
「いや、トオルは悪くねえよ。悪いのは、ヒカルだ」
「ヤス!」
アキが怒ったようにヤスユキを咎めるが、ヤスユキは聞こうとしない。
「いいや、言うね。ヒカルが悪い。俺たちはこれだけあいつのことを心配して、友達だと思ってんのに、何も教えてくれてねえだなんて、水臭いじゃねえか。明らかに、あいつが悪いだろこんなん」
ヤスユキは、憤っていた。悔しいのだろう。友人のことを何も知らない自分に、失望し、怒っているのだ。その怒りをぶつける相手が、いない。やり場の無い怒りを抱えているのだ。
ヤスユキの言葉を聞いて、アキも目を伏せる。シズカが、ゆっくりと口を開いた。
「……いい、機会じゃないか。こうやって、ヒカルのことを、知れてきてる」
「そうだよ! ポジティブに考えよう、ポジティブに!」
トオルが場を和ませようと極力明るい声で賑やかそうとするが、アキは俯いたまま、拳を握っていた。そのアキを、三人が見守る。
アキが、肩を震わせながら、言った。
「……でも私は、ここで見たヒカルを、信じたい。あれが本当のヒカルで、裏の顔なんて、知らない顔なんて無い、って、信じたい」
その言葉に、靄が晴れたように三人が目を見開く。
「……ああ、そうだな」
「そうだね。そういうことだ」
「……ま、そうだろうな。あいつは、根は単純な男だ」
「いや、ヤスよりは複雑だよ、絶対」
「まあ、ヤスより単純な奴はいないだろうな」
「そりゃそうでしょうね。あんたも、バカなことは言わないほうがいいわよ?」
「おい、ちょっと待て! 何で俺を貶める流れになってんだよ!」
ヤスユキが怒り、三人が笑う。その笑いが収まって、銘々に改めて空を見上げた。
白い入道雲が浮かび、眩い太陽が燦々と照りつけてきている。
目を細めて、視線の先の街を見下ろした。
「……行くか、あそこに」
シズカが、眼鏡を上げた。その目の色は、見て取れない。
「そうするしか、ないよね」
トオルが、ハンドルに顎を載せて呟く。
「しょうがねえなあ」
ヤスユキが体を反らして、頭の後ろで手を組む。
「……待ってて」
アキが、仁王立ちになり、じっと見つめた。
街は、朝焼けを反射し、光り輝いていた。
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