Morning/3-3

「え!? どういうこと? ファン?」

 トオルが声を上げると、シズカが頷き、続けた。

「いや、ファンじゃない。天使応援団、というファンサイトもあるにはあったけど、皆〝自分だけのヒカル〟と思っているみたいで、更新もだいぶ前から止まっている。それよりも、これは最近できたもので、どうもこのサイトを立ち上げた人物は消えた〝ヒカル〟を探しているみたいなんだ」

 そう言ってシズカがノートPCを三人の方へと向けた。

「何これ……」

 そのページは、基調として黒が用いられていて、黄色い文字でセンセーショナルに情報提供を呼びかけていた。

 有体に言って、懸賞金が賭けられているかのようだ。

「どういうこと?」

「わからない。ただ、ここの管理人と見られる奴が、うちの高校の裏掲示板のいたるところに現われて、ここのサイトのURLを広め、情報を求めていたのは確かだ」

「誰、それ」

「それがわかれば苦労は無いんだけど……」

 シズカは首を振り、眼鏡の位置を直した。

「名前も明かさず、ただ〝夜のヒカリガオカを守る会〟としか名乗っていないんだよな。メールアドレスもこれ専用の捨てアドみたいだし、足跡が摑めない」

「そいつらは、何を狙ってるの?」

 それにもシズカは首を振り、「ただ」と言葉を付け加えた。

「ヒカル失踪以降だから、なんらかの形で関わっていることは間違いないと思うんだ」

「夜のヒカリガオカ、か……」

 アキが呟き、赤い、ぷっくりとした唇に手を当てる。それに目を奪われるようにヤスユキが吸い込まれながら、呟いた。

「でもよ、夜ってことは、ホストとか、そこらへん関係かな……」

「あいつに!? それこそ無理でしょ」

「いや、顔はいいし、困っている人を助けたいなら、うってつけかも」

「芸能界の入り口として、そういう仕事をする人間もいる、っていうしな……」

「いやいやいや、芸能界はありえない、ってさっき話したでしょ!?」

「でも、それの話を聞いてて、自分の趣味と実益を両方こなせる、って思ったのかもよ?」

「その水商売、夜の世界で、何らかのトラブルがあった……」

 どんどん妄想を逞しく彼らにアキは頭を押さえながら言った。

「皆さあ、落ち着いて? ヒカルが、そんなことするわけないでしょ?」

「わかんないよ? 僕等がどんだけヒカルのことを知ってるっていうのさ」

 トオルのその返事に、一瞬、場が水を打ったように静まり返った。言ったトオルも、固まっている。

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