Morning/3
Morning/3-1
「おっはよう!」
アキが勢い良く自転車の鼻先を駐車場に突っ込み、前のめりになって後輪を浮かせる。
「……おはよう」
「お……はよう」
「……お前はいつも朝から元気だねー」
シズカとトオルが搾り出すように挨拶をする中、ヤスユキが溜息混じりに憎まれ口を叩いた。アキは仁王立ちになり腰に手を当てながら三人を睥睨する。
「どうしたのー? 皆、今日は元気ないじゃない」
「当たり前だろ。遅くまでヒカルのこと、調べたんだから」
「え! そんなに?」
「お前はそんなことないのかよ。捜す、ってなったら、そりゃ本気で捜すだろ」
「それはそうだけど……」
バツが悪そうに唇を尖らすアキの頭を、ヤスユキはぐしゃぐしゃと撫でた。
「ちょっと! やめてよ!」
「ま、お前は頭脳労働より体力派だからな。それまでは体力を蓄えてりゃいい」
「何その言い方! 別に、私だって夜遅くまで女友達とLINEとかしてたからね? 徹夜はしてないけど……」
「いいんだよ。女友達も寝るだろ。それで、じゃあ俺から話すか?」
ヤスユキがシズカとトオルに訊く。シズカはどこから取り出したのか、ノートパソコンを叩きながら頷いた。トオルも、ハンドルに顎を載せて眠たそうに目を瞑ったまま、「いーよー」と気の無い返事をする。
「なんだよ、その、まるで俺には期待してない、みたいな態度。後で吠え面かくなよ?」
「いいから、早く言いなよ。言わないなら、私から言うよ?」
「待て待て待て。わかったよ、言うよ……」
まだ何かぶつぶつ不満そうに言いながら、ヤユスキはポケットに無造作に突っ込んでいたメモ用紙を取り出し、皺を伸ばしながら読み始める。
「ええっと、運動部は、基本的に助っ人としてヒカルに頼ってたみたいだな。あいつ、運動神経も抜群だしなあ。で、他校からは睨まれてたみたいだけど、高校単位って縛りがあるから、他校との関わりはなかったみたいだ。だから、恨みを買ったり、どっかに他の高校の手伝いをして消えてる、って可能性は低いんじゃないか、ってさ」
「ほら、やっぱり」
アキが吐き捨てるのを、ヤスユキが地団駄して抗議する。
「違えよ! まだあんだよ! ちゃんと聞けよ! ……でも、その会場でスカウトに声をかけられることが多くあったらしい。実際のその姿を見たのは、サッカーとバスケ。そのプロ組織とか、実はイケメンスポーツマンを探して芸能事務所の人間も来てることもあるらしいから、そこらへんを探してみれば、ってよ!」
「はー、まあイケメンではあるしねえ……。でも、じゃあスカウトされて、オーディションのために上京してるとか? ないない!」
アキが笑って手を振り、シズカも頷く。だが、まだ目を瞑ったままのトオルが、間延びする声で言った。
「うーん、あながち、ないとは言い切れないかもねー」
「え? 何で?」
アキが聞くと、トオルがやっと、薄く目を開けて目を擦りながら話し始めた。
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