Night/2-6

そう言うと、おかしそうに腹を捩らせた。

「ああおかしい。何が助けるさ。そう、私に手を差し伸べたのは、ヒカルだよ。でも、どこにいったかなんて知らない。私が聞きたいくらいさ」

「どこで会ったんだ」

「場所は……」

 レミは空を見上げ、その頃を思い出すように虚ろな目になった。しかし、その目に宿っている色は、懐かしさであり、憎しみとは思えなかった。

「そこの廃ビルの近く。半月が綺麗だったなあ……。辛くて、路地を歩き回ってたら、月を背にあいつが現われて言ったんだよ……」

「そうか」

 アラタが頷き、シンジロウたちと目を合わせた。そして、また視線をレミに戻す。

「じゃあ最後にもうひとつだけ。初めてそのクスリを手に入れたのは、どこで?」

「ここ」

 それは吐き捨てるように即答し、顔を歪めた。

「今日もそこにいるよ。屑みたいな顔した、あいつ」

 レミが顎で示す。その先には坊主頭の、目がどんぐりのように小さなずんぐりむっくりとした体形の男が何かを探すように歩いていた。

「ありがとう」

「どういたしまして。〝ヒカル〟が見つかったら教えてね。じゃ、私はあいつに会いたくないから、帰るよ」

 飲み物を飲み干し、レミはその場をふらついた足取りで去っていった。

 その赤いワンピースを見送りながら、アラタが呟いた。

「どこまで本当なのやら」

「え? どういうこと?」

 シュウが訊ね、アラタが応える。

「だって、〝クスリ〟をやってる人間の答えだ。信用ならないよ」

「そっか……」

 考え込むシュウに、シンジロウが言葉をかぶせた。

「……彼女の言葉は、信用しても、いいと、思う……」

「ま、そうかもな」

 アラタも同意し、シュウは眉根を寄せる。

「俺の曖昧な〝悪魔〟なんて単語で、俺たちが想像している人間と合致しただろう? 噓を吐く余裕が、あんまりなかったんだよな」

「……それに、この小さな街で、そう多く、売人がいるとは、思えない……」

「ってこと。とりあえず、あいつに話を聞こう。そうすりゃ〝ヒカル〟に必ず繋がるさ」

 アラタがレミの指した小太りの男の元に行こうと一歩踏み出した。だが、その肩を、シンジロウが摑む。

「どうした?」

 アラタが訊くが、シンジロウはゆっくりと首を振った。

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