Night/2-3
けたたましい爆音、そして刺激的なことしか目指していない照明。それに荒れ狂うようにのせられ、踊る若者たち。
その中を、人波を掻き分け目を光らせながら、三人が探っていた。
「ねえアラタ! どんな奴探せばいいの?」
「そうだな、瘦せ過ぎてる女をまずは捜してくれ! 男よりは、話も聞きやすい!」
「わかった!」
耳元でも叫ぶように話しながら、三人はフロアに視線を巡らせた。クラブは健全に踊る人々がいる一方で、明らかに下心を持った目をしている男や、何故か黙って黙々と酒を傾けている女など、多種多様な人々が揃っていた。
その中で、金髪で、派手な服装で露出が激しいが、どう見ても服の大きさがあっていない女性が目に付いた。だぼついている。瘦せ過ぎているのだ。ミニスカートから覗く脚も骨と皮だけのように細く、声をかけようとした男が近くで見てぎょっとしてその場を離れた。
女はそんなことお構いなしに異様なほど音楽に乗って体を揺らし、周りにスペースを作っている。
だが、そんな女にも怯まず、アラタとシンジロウはすぐさま距離を詰めた。アラタが、笑う。
「やあ」
アラタの優しい声音に、女が顔を上げた。しかし、女は一瞬、アラタを見たと思うと、また激しく踊り始めた。
それを受けて、アラタは頬を引き攣らせるが、もう一度、咳払いをして、声をかけた。
「なあ、どうせなら一緒に踊らないか?」
また女は顔を上げ、左右を見てから、焦点の合わない目でアラタを眺めた。
「あたしに言ってんの?」
その反応に安堵の息を吐き、笑顔のままアラタが頷いた。
「勿論」
「へえ、奇特な奴もいたもんだ」
目尻が上がりきつそうに見えるが、焦点を見失った目をした女が、口元を歪めた。笑ったのかもしれない。
「どうして。君の踊り、最高じゃないか」
「はっ、冗談言わないでよ。私だってダサいのわかってんだ。それでも、こうして音に溺れていないと死にそうだから、踊ってるだけなんだから」
「その必死さが、魅力的だ、と言ってるんだよ」
真摯な目で、アラタが見つめる。女が目を丸くして、視線を逸らした。
「な、なにさそれ。わかったよ。なんか話聞きたいんだろう? そこで待ってて。酒とって来るから」
そう言うと、女は奥のテーブルを指してからその場を立ち去り、バーカウンターに行くかと思ったらそこを通り過ぎて奥へと消えていった。
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