Night/2

Night/2-1


 遠くで騒がしく、喧しい嬌声が聴こえていた。夜の街へと繰り出す者たちの、解放されたことに対する喜びの声だろうか。しかし、そんなこと関係の無い猫は、のっそりと立ち上がると、廃墟のビルを跡にし、狂乱の後に出る餌を求めて闇へと消えて行った。

 それと入れ替わるようにして、ひとつ、またひとつと人影が現われた。

「おう」と静かに挨拶をして、それだけで後はまるでそこに人などいないように、好き勝手にしたいことをし始める。

 やがて、最後の人影、シュウが現われ、

「ゴメン! 待たせた?」

 と訊くと、それぞれに顔を上げ、ぞろぞろと集まってきた。それでも、銘々の距離は遠い。

「……いや、別に、夜は長い……」

 シンジロウが静かに呟くと、アラタもそれに同調し、続けた。

「クラブに行くならこれからだしな。さて、それじゃあこれからどうしようか」

「調べに行くんでしょ? ここを、守るために」

「ああ。そのためにどうすればいいか、意見を聞いているんだ。俺たちは、ここを共有するだけのメンバーで、仲間じゃない。指示を出すのはおかしな話だろ?」

 アラタが三人を見回すと、シンジロウがゆっくりと口を開いた。

「……俺は、ここの脅威となりうる、〝ヒカル〟を探すのに、同意した……。だから……それに関してお前が決めたことに、文句は言わない……」

「それもまた、意見のひとつだ。わかったよ、シンジロウ。じゃあ、シュウとマキは?」

 指を、ふたりに向ける。シュウが相変わらずキャップを深く被ったまま、口元に手を当てて考え込んだ。

「別に……聞き込みするしかないんじゃない? ちょっと危なさそうな人、とかさ」

「ゲーセンとか、〝そういうの〟求めてるやつもいるんじゃない?」

 マキがPCモニタの電源を消さずに、指を動かしながら発言する。アラタは爽やかに笑って頷くと、言った。

「わかった。じゃあ、二手に分かれて聞き込みをしよう。俺とシンジロウ、シュウとマキのコンビで、俺たちがクラブ、シュウ達がゲーセンに行ってみてくれ」

「オーケー。じゃ、行こうか、マキ」

 シュウが声をかけるが、マキはパソコンの前から動こうとしなかった。

「…………」

「? どうしたの、マキ?」

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