Morning/2-5
ヤスユキがハンドルに顎を載せて、シズカに問う。こういったとき、まず頭を使うのはシズカの役割、となんとなくなっている。
シズカは顎に手を当て、暫く考えていたが、ゆっくりと顔を上げ、口を開いた。
「やっぱり、僕等以外で、ヒカルの世話になった人間に話を聞くことから、だろうね」
「昔の話を聞いて、なんか意味あんのか?」
ヤスユキの質問に、シズカは頷く。
「ヒカルはどうやって情報を得ていたか、をまずは調べたいんだ。僕達は近くに居て、ヒカルが自分で見ていたから気づいてもらえたけど、ヒカルに救われているのは僕達だけじゃない。そして今回の失踪も、どうせ誰かを助けようとして何かのトラブルに巻き込まれたんだろう。だとしたら、そういう〝困った人間〟の情報をヒカルがどうやって得ていたか、を調べれば、今回の依頼人というか、助けようとした人間とどこで出会ったか、がわかってくるんじゃないかな」
「なるほどねー。でもそれ、結構気が遠くなるような作業量のような……」
トオルが空中を見上げて、何かを思い出すように唇に手を当てた。アキも、腕を組んで頷く。
「だよねー。ヒカル、そういうとこ見境なしだからなあ。ま、だからこその〝天使〟なんだろうけど」
「あ、本人がいないからってその呼び方したら、怒られるよー」
アキの言葉に、トオルが含み笑いをして言った。怒られる、と言いながらも気持ちは同意しているようで、それは他のふたりも同じようだ。シズカは少し俯いて表情を隠し、ヤスユキは呆れたように首を振っている。
「まったく、何が〝天使〟なのかね。俺にはさっぱりだよ」
「でも、まあ目の前に立ったヒカルの姿を思い出すと、言いたくなる気持ちもわかるけどね」
トオルが少しはにかんだように笑う。
「そこには、僕も同意する」
シズカが頷いた。
「ダメでしょ、友達の私たちがそんなこと言ってたら」
「あ、自分で言っておいて、アキずるい!」
トオルの言葉にアキがぺろりと舌を出す。
「あはは。ま、いい男なんだよね。それは私も認めるよ」
「別に俺はそこも認めねえけどな」
ヤスユキが胸を張ってそっぽを向く。
「またまたー。一番認めてるくせに。男の嫉妬は恥ずかしいよー?」
「な、何が!」
ヤスユキが顔を真っ赤にするのをアキがからかいながら、自転車を漕ぎ出した。
「あっ、こら、待て!」
「じゃ、私は女子を中心に聞いてみるから! まった明日~♪」
髪を後方になびかせながら、アキは颯爽と去っていった。
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