Morning/2-2
「え?」
アキが驚く中、トオルが続ける。
「もしかしたら、危ないことに巻き込まれてるかもしれない。ヒカルがいなくなるのは、僕、嫌だよ。僕が助けられるのなら、助けてあげたい」
「でも、危険だからこそ、私たちには『いなくなっても気にするな、何も心配する必要はない。放っといてくれ』って言ってたんじゃないの?」
「じゃあ指銜えて黙って待ってろって言うの?」
トオルが怒って立ち上がった。アキが、一瞬身を竦め、そして俯く。
「ごめん……。でも……」
言い淀み、黙ってしまうアキに代わって、ヤスユキが背を伸ばした。
「あー、やっぱり黙って待つなんざ性に合わねえよな。アキも、ほんとはさっさと探しに行きたかったんだろ? あいつに気い使って、あいつの帰ってくる場所を作って待ってたって、誰も誉めてくんねえよ。行こうぜ、あいつの頭叩きに。心配されたくなかったら、心配させんな、って」
「ヤス……」
アキが顔を上げ、ヤスユキを少し潤んだ目で見る。
「自分は好き勝手するくせに、僕らにはなるべく危険に遭ってほしくない、っていうのがヒカルの悪いところだ。僕らも、もっと頼りになることを、教えてやらないと」
「シズカ……」
「ほんっと、ヒカルってじこちゅーだよね。〝天使〟とか呼ばれて他人のために何かしてるって言ってるけど、本当は自己満なだけでしょ? 自分のことも、もっと大切にしろ、って話だよ」
「トオル……」
アキは笑って、少し目尻を拭い、力強く頷いた。
「うん。そうだね。探そう。あいつをぶっ叩いてやろう。あいつにわからせてやろう」
四人が自転車の前輪をつき合わせ、誰からともなく手を差し出した。全員が、全員と目を合わせる。アキが、一歩前に出た。
「いい?」
暖かい陽の射す駐車場に、それぞれの決意に満ちた笑みが浮かぶ。
「やるよ!」
「おう!」
声を合わせ、手を挙げた。
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