Morning/2
Morning/2-1
「おっはよう!」
爽やかで元気な挨拶で、また一番最後にいつもの場所に、アキが入ってきた。先に居たシズカは眼鏡を上げ、トオルはハンドルに顎を乗せながら、ヤスユキは眠たげに、「おはよう」と返した。
「どうしたの、皆。朝から元気ないよ?」
「お前が朝から元気過ぎんだよ」
そう言って、ヤスユキが溜息を吐く。その返しに怪訝な顔を向けるアキに、トオルが笑って手を振った。
「ヤスは、これから地獄の朝練だからテンションが低いんだよ。それに、昨日のショックもあるしね」
「ああ、それで」
納得するアキに、ヤスユキは抗議の声を上げた。
「最後のはちげえよ! 別に、期待なんかしてなかったし。それに俺には野球しかねえから、告られても応えられねえしな」
「強がんなくていいんだよ。ヤスも男の子なんだから、そういうことを考えるんだってことくらい、お姉さんは理解してあげるよ」
うんうんと頷きながらヤスユキの背を叩くアキに、ヤスユキが憤怒して暴れる。
「なんだその訳知り顔は! 別になんも考えてねえよ!」
そんなやりとりが交わされる中、黙って立っていたシズカがぽつりと呟いた。
「いい加減、無理はよそう」
その言葉に、ふざけあっていたアキとヤスユキは動きを止め、シズカに顔を向けた。トオルがシズカに目をやり、真剣な顔で訊いた。
「どういう意味?」
「そのままの意味だよ。もう、いいじゃないか。ヒカルについて、ちゃんと話そう」
「何を? 私たちに、何ができるって言うの」
アキが少し怒ったように言う。ヤスユキも、腕を組んでそれに同調した。
「そうだろ。あいつが言ったんだぜ、何もするな、って」
「確かに言ったさ。でも、心配するのは僕達の自由だろう」
「いつものことじゃない。急に消えて、ぶらりと帰ってくるなんて」
「それでも、一週間以上いなくなったことはなかったし、長くなるときでもここだけには顔を出していた。もう三週間目だ。何かあったと考える方が普通だろう」
シズカの言葉に、三人は黙ってしまう。シズカは息を吐いて、顔を横に振った。
「いや、ごめん。僕も不安で、感情的になってしまってる。ただ、無理をして心配してない振りなんかしないで、正直に振る舞えばいいんじゃないかって言いたかっただけなんだ」
「ううん。ありがとう。そうだよね、心配するくらい、したっていいよね」
アキがその白い首筋に毛先を揺らし、頷いた。ヤスユキも罰が悪そうにそっぽを向きながらも「まあ、な」と呟き、トオルもじっと地面を見て、顎を引いた。
「うん。僕、ヒカルが心配だ」
確認するようにそう言うと、顔を上げてシズカと視線を合わせた。そしてアキとヤスユキにも顔を向ける。
「ねえ、僕らでヒカルを探そうよ」
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