Night/1-3

「ああ。マキにはまだ言ってなかったな。今日も俺が来る前に何者かが侵入した形跡があったんだ。それで、シンジロウと一緒に探ってたんだけど、今までとはちょっと違う気がしてる」

「今まで、って?」

 マキと呼ばれた少年が首を傾げるのに、大工青年、こちらがシンジロウだろう、が応える。

「……今日のは、痕跡を見つけるのが、難しかった……。まるで、消そうとしているかのように……」

「これまでのは、俺たちから隠れてはいたけど、そんなことはなかっただろ? それがどうも、ここ最近変わったんじゃないか」

「これまでの、ヒカルじゃない?」

 マキが、そう聞き返す。イケメンは頷いて、少し髪を掻き上げた。

「ああ。恐らくだが、こいつらもヒカルを探している」

「僕らと同じ……」

 マキが黙って俯く中、シュウが手を挙げた。

「じゃあさ、アラタはそいつをなんだと思ってるの?」

 アラタ、と呼ばれたのは、イケメン長身ゆるふわパーマだ。アラタはそう問われ、うっすらと微笑んだ。

「元締め、だろうな」

「元締め?」

「俺らが追ってる〝ヒカル〟が、想像通り、人を殺してここに逃げ込んで、この街を堕としていっているんだとしたら、これで最近見つからない理由も説明がつく」

「どういうこと?」

 シュウが首を傾げる中、アラタは説明を続けた。

「たかだか俺たちと同じくらいの子供が人を殺して逃げられて、逃亡中なのにそう簡単にクスリを捌けると思うか? 俺は、そうは思わない。後ろ盾があるはずだ」

「そっか! そこが、探してるわけだね。そして、〝ヒカル〟に探してることを知られたくないから、〝ヒカル〟を他の人間に見つけられても困るから、痕跡を消した。ということは……」

「……〝ヒカル〟は、逃亡、したんだろうな……」

「あ、言おうとしたのに!」

 シンジロウに言葉を奪われたシュウが抗議するが、暴れるシュウを無視して、シンジロウはアラタに訊いた。

「……それで、どうするんだ……?」

 シンジロウの言葉は、いつも考えられて発言され、シンプルで少ない。だがアラタには、それだけで通じているようだった。

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