Morning/1-4

「…………」

「……どしたの?」

 アキが心配そうに首を傾げた。それに呼応して、ヤスがゆっくりと振り返る。その目は、心なしか潤んでいるように見えた。

「違った……」

 その表情に、アキが大笑いをする。

「あはは! もう、バカなんだから。で、何だったの? 勧誘? 通販? それとも、果たし状?」

 笑いながら手紙を覗き込もうとするアキに、ヤスは手紙を手渡しながら、項垂れて言った。

「え? いいの? ヤスへなんでしょう?」

「いや、俺へじゃなかった……」

「え? 誰に?」

「ヒカルに」

 全員の動きが、止まった。

「渡してくれ、ってよ」

 ヤスはふてくされて、ハンドルに突っ伏した。手紙を受け取ったアキは、トオルと一緒に文面を覗き込む。シズカも、後ろで眼鏡を光らせた。

 確かに手紙には〝ヒカルが気になる。ついては仲の良さそうなヤスユキ君から、同封の手紙を渡して欲しい〟といった内容のことが書かれていた。

 三人は手紙から顔を離し、ヤスユキに返した。ヤスユキが持っている封筒の中に、もう一通、小さめの可愛らしいピンクの封筒がちらりと見えた。それが、ヒカルに渡して欲しい本命なのだろう。

 橋渡しを頼まれたのだ。それを浮かれていたのだから、もう少し笑ってもいいようなところなのに、四人は何故か、黙ってしまった。

 暫し沈黙が訪れ、遠くから鳥の鳴き声や車の音、そろそろ登校し始めた生徒たちの声が聞こえてくる。温かい光が、駐車場に入り込んできた。長閑な、朝だ。

 そんな中、遠くの空を見上げていたアキが、ぽつり、と呟いた。

「どこに行ったんだろうね、ヒカル」

 その呟きは、入道雲の上の、気持ちの良い青に吸い込まれてしまったのだろうか。四人は、ぼんやりと、その空を見上げた。

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