Morning/1-3
アキが目を丸くする中、シズカも黙って眼鏡を上げ、トオルも「へえ!」と声を上げた。
「なんだよお前ら。失礼だな」
ヤスは唇を尖らし文句を言いながらも、後ろの荷台に括りつけていた鞄を開け、一通の手紙を取り出した。
「じゃん!」
前に掲げ、にやりとほくそ笑んでみせる。
「何これ?」
アキが顔を寄せ、表面を眇めた。だがヤスはそれをすぐさま体の後ろに隠す。
「何よ」
「相手のプライバシーがあるからな。じっくりと見せるわけにもいかねえんだよ」
「相手?」
「え! ヤス、ラブレター貰ったの!?」
先に言葉に反応して甲高い声を上げたのは、トオルだった。
「ええ!?」
その言葉にアキが目を丸くしてトオルを振り返り、ヤスが鼻高々に胸を反らせて見せた。
「ふふん、まあ俺ほどにもなると、ラブレターの一通や二通、珍しいもんでもないけどな」
「珍しくなかったら見せびらかさないでしょう」
「……信じられないな」
ふたりが盛り上がる中、シズカに冷静に否定され、ヤスがむくれて見せた。だがいつの間にか、他のふたりも懐疑的な視線を送っている。
「な、なんだよ、皆して! ほ、本物だぞ!」
「自分から言い出すのが怪しい……」
「そうよ! 信じて欲しいなら、見せなさい!」
トオルの言葉に背中を押され、アキが手を伸ばす。最初はじゃれているようだったが、徐々にアキが本気になってきた。
「いいから、見せなさいよ!」
「駄目だっつってんだろ!」
笑いながらも、ヤスもそろそろ諦めそうになる。だがそれを、トオルが止めた。
「ダメだよ、アキも、ヤスも」
静かに、少し泣きそうな顔で、トオルが佇んでいる。それを見て、アキもヤスも暴れるを止め、粛々と言葉に従った。
「そうだよね、ごめん……」
「こっちこそ、わりい……」
ふたりが気まずく俯く中、トオルが場を和ませるようにもぐりこんで下から明るい声を出した。
「それよりさ、中身は、ちゃんと確認したの? 笑うつもりも、馬鹿にするつもりもないけど、ヤスのことだから、まだ怖くて中見れてないんでしょ?」
「なっ、なんでわかんだよ! 別に、今から見るし!」
ヤスは照れ隠しか気まずい雰囲気を変えようと思ったか、少し声を張りながら、三人に隠れるように後ろを向いて、ゆっくりと便箋の封を開けた。
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