Morning/1-2
「おはよう!」
少女が元気に声を掛けると、先に集まり自転車に跨っていた男子高校生三人がそれぞれに顔を向けた。
「おはよう」
「おはよ」
「おう」
黒長袖の制服で、眼鏡をかけた長髪長身瘦躯の男子高校生と、背が低く声も高い童顔の男子高校生、そしてスポーツ刈りで半袖の制服から覗いた腕が見事にこんがりと焼けている男子高校生が、三者三様に挨拶を返す。
場所は、通学路から一本入ったところにある、ビルの一階部分の駐車場。四隅に柱だけがある開けたスペースで、陽に照らされて温かい。気持ちの良い朝に集まるには、絶好の場所だった。
少女はそこで三人が三角形を作っている一角に自転車の鼻先を突っ込み、ブレーキを踏んだ。後輪が少し浮いて、その場に着地する。車輪で十字を描くような隊形に収まった。
「今日も元気だね、アキ」
童顔が、にっこりと笑いながら言った。
「当然じゃない。朝からテンション低くてどうすんの? 皆は? シズカは、何かいいことあった?」
少女・アキはまず長髪にそう問いかけた。長髪の男子高校生・シズカは眼鏡を上げ、ゆっくりと首を横に振り、ぽつぽつと言葉を紡いだ。対面とは対照的に腕が白い。
「別に。ただ、僕はゆっくりと上昇していくタイプだから、朝は低くて当然だ」
「そっ。ならいいけど。トオルは?」
次に、童顔へと顔を向けた。童顔は嬉々として手を挙げる。
「僕? 僕はね、あったよ、いいこと!」
「え、何々?」
興味津々といった様子でアキが前へ身を乗り出した。
「さっきアキのパンツ見えた!」
「ばか」
アキは正面の少年・トオルの頭を叩くと、左隣のよく焼けた青年に目を向けた。しかしすぐに背け、溜息を吐く。
「ヤスは、別にいっか」
「おい! いっか、ってなんだ。いっか、って! 聞けよ、俺にも!」
食い気味にスポーツ青年・ヤスが反応し、腕を広げる。アキは眉をひそめ身を引きながらも、「じゃあ、聞いたげるけど……」と口を開いた。
「あんたは、なんかいいことあったの?」
「良くぞ聞いてくれた。実は今朝……」
「え、ほんとになんかあったの?」
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