第2話 南の島からの手紙

親愛なるオリヴィアへ


 この手紙はわたし、キャロライン・ルルイエの祈りで、決意表明で、もしかしたら遺書になるかもしれない。

 もしもわたしがこのままいなくなったら、寮に置いていった若草物語の本はオリヴィアがもらってちょうだい。


 この手紙を投函したら、わたしとルイーザはおじいちゃまの救出に向かうわ。

 場所はルイーザが不思議な力でだいたいこの辺りって突き止めて、あとはわたしが聞き込みをしてーー

 近くの浜に、大潮のときだけ現れるほら穴があるんですって。


 地元の人の話によると、そのほら穴に入って、生きて戻ってきたニンゲンはいないそうよ。

 人が入るとすぐにーー不自然なくらいすぐにーー潮が満ちて出られなくなってしまうらしいの。


 でもね、そんなほら穴に大昔から出入りしている人たちの伝説があるの。

 地元の人は深きものどもって呼んでいる、魚のような人々。

 きっとインスマウスの住人の仲間よ。


 そのほら穴にわたしとルイーザの二人だけで乗り込むの。

 びっくりでしょ?

 遺書とか言いたくなるのもわかるでしょ?

 もちろんこれで死んじゃっておしまいなんかにはなりたくないけどーー


 そうね、こうなってほしいっていう、この冒険のおしまいの仕方はーー

 まずサン・ジェルマンおじいちゃまを助け出して、それから悪い人たちのことを警察に知らせるの。

 逆になるのはダメよ。

 先に警察に知らせてもわかってもらえるとは思えないし、わかってないのに助けに来られたら余計におじいちゃまを助けられなくなってしまうわ。


 おじいちゃまを無事に助けて、でもおじいちゃまについて警察にあれこれ調べられるのはナシで。

 四人でイギリスへ帰って、アデリン叔母さまをお医者さまに見せてーー

 叔母さまはきっとすぐに良くなるわ。

 最近はロボトミーっていうすごい治療法もあるって聞くし。

 詳しいことはイギリスに帰ってからお医者さまに訊きましょ。


 ルイーザとおじいちゃまは幸せに暮らすの。

 それが祖父と孫としてなのか夫婦としてなのかはわたしにはわからないけれど。

 幸せであってほしい。

 みんなみんな幸せであってほしい。


 そしてわたしはお茶をしながら今日のことをオリヴィアと話すの。

 それがわたしの望む幸せよ。

 そうなるように、どうか祈って。


キャロラインより








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