第41話 ノベンバへのインタビュー

※降霊会の会場にて。


「誰だい、アンタは!? アタシは死んだはずだよ!?

 なのに何でこんなところにいきなり呼び出されなくっちゃならないんだい!?」


Q――いつ死んだのか。


「シャーマーメイズの任務中だよ。

 一九三〇年の一〇月の……何日だったかは忘れちまったよ」


Q――どこで死んだのか。


「アメリカの、マサチューセッツ州の端っこ。荒野を通る線路の近くだ。


Q――どのような任務だったのか。


「ルイーザ・ルルイエがフェブラリー・タウンから出てくるのを待っていたんだよ」


Q――フェブラリー・タウンがどのような場所かをあなた(ノベンバ)は知っているのか。


「こっちも歴史のある組織なんでね。クトゥルフ様に敵対する奴らのことぐらい一通り調べてあるさ」



Q――ルイーザ・ルルイエとは何者か。


「クトゥルフ様の触手の先端。

 クトゥルフ様の魂のカケラにして、クトゥルフ様の肉体の眠るルルイエの封印を解く鍵さ」


Q――ルイーザ・ルルイエはパトリシア・ルルイエではないのか。


「肉体はパトリシア。魂は違うよ」


Q――ならば何故、パトリシアとして振る舞うのか。


「パトリシアの脳細胞に残った記憶のせいで、クトゥルフ様はご自分をパトリシアだと勘違いなさっておられるんだ」


Q――パトリシアの魂はどうなったのか。


「さてね。考えたこともなかったね。

 ルルイエの辺りを今もさまよってるんじゃないのかい?」


Q――パトリシアの魂が、クトゥルフの魂と入れ替わりにクトゥルフの中に入っている可能性は。


「ないね。大いなる種族とか名乗ってる虹色のグニャグニャじゃあるまいし、魂の入れ替え方なんて、人間どもにはわかりゃしないさ」



Q――あなた(ノベンバ)は、自分が死んだときのことを覚えているか。


「途中までならね。

 ……あのときすでにシャーマーメイズのメンバーは四人しか残っていなかった。

 六人はルルイエの絵を完成させるために自ら生け贄になったわけだが、イギリスで一人、インスマウスでさらに一人失うとは、誰も予想していなかったよ。

 ん? 絵を描いた時期? ああ。アタシらの寿命は人間どもとは違うんだよ。


 アタシらは二人一組になって交代でフェブラリー・タウンの出口を見張った。

 交代のときにセプテナとちょっと話したところでは、前にイギリスでやったみたいにアデリンの夢に時空越しに入り込めないか手を尽くしても、似た力を使うヤツに妨害されたそうだよ。

 ……いや。アタシらの中でそんな真似ができるのはセプテナだけさ。


 アタシとディセナの当番だったときにそれは起こった。

 時空の狭間なんてモノには近いも遠いもないんだが、まさにどこともつかぬところから、いろんなモンが壊れる音が轟いてきた。

 いろんなモンだよ。

 建物や大地や空間そのものが壊れる音さ。


 アタシは、驚きはしたけどビビりはしなかった。

 別の時空で起きてることだからアタシには危険はないって思ってたんだ。

 なのに気がついたらアタシは瓦礫に押しつぶされて、何が起きたかわからないまま死んじまった。

 一緒にいたディセナはどうなったのかねえ……



Q――あなた(ノベンバ)は、ハリウッドへは行っていないのか。


「何の話だい?」


Q――ルイーザ・ルルイエがクトゥルフであるのなら、ルイーザ・ルルイエは何故、モスマンについての記憶を有しているのか。


「だから何の話だいッ!? そもそもアンタは誰なんだッ!? すでに死んでるアタシにどうやって……どこへ行ったッ!? オーイッ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る