第25話 監視カメラの映像/イーグルスホテル 続き
狭い廊下の映像
キャロライン・ルルイエ、従業員用と思しき飾り気のない廊下を、転がるように走り抜ける。
四.五秒後、円錐形の生物がキャロライン・ルルイエのあとを追いかけていく。
生物の体は、廊下が塞がるほどに大きい。
廊下の突き当たりの映像
暗い色の扉がある。
モノクロのため実際の色は不明。
キャロライン・ルルイエ、把手に飛びつく。
開かない。
キャロライン・ルルイエ、扉をたたく。
把手を何度も回そうとする。
画面の隅に円錐形の生物の姿が映る。
画面で見る限りでは、両側には壁しかなく、扉のほかに逃げ道はない。
扉が開き、奥から人間の腕が伸びてきて、キャロライン・ルルイエの手首を掴む。
キャロライン・ルルイエ、扉の向こうへ引きずり込まれる。
扉の向こうは下りのスロープになっている。
スロープの映像
アデリン・アンダーソンがキャロライン・ルルイエの手首を掴んだまま、なれた手つきで扉脇の制御盤を操作。
扉が閉まる。
円錐形の生物は締め出された模様。
アデリン・アンダーソン、やや強引にキャロライン・ルルイエを引っ張ってスロープを降りていく。
※映像から二人の唇の動きを読む
キャロライン・ルルイエ「叔母さま! ここは何なの!? いったいどこへ行くの!?」
アデリン・アンダーソン「知りたいかい?」
キャロライン「ええ! もちろん!」
アデリン「なら取り引きだ。ワレワレもキミしか知らないことに興味がある」
キャ「え?」
ア「サン・ジェルマンについて」
キャ「何を言っているの!? 叔母さまが知らないことをわたしが知っているわけが……」
ア「サン・ジェルマンと世界を旅して、さまざまなものを見てきたのだろう?
キャロライン・ルルイエがアデリン・アンダーソン(?)の手を振りほどく。
アデリン・アンダーソン(?)、無表情にキャロライン・ルルイエを見つめる。
キャロライン・ルルイエ「あなた、誰なの!?」
アデリン・アンダーソン(?)「キミが養子にした男の妻の妹のはずだが?」
キャロライン「違う!」
アデリン(?)「ふむ。何故その判断を?」
キャ「何でアデリン叔母さまがわたしとおばあちゃまを間違えるのよ!?」
ア(?)「うむ? キミとパトリシアは同一人物なのでは?」
キャ「だから何を言っているの!? そんなわけないでしょ!?」
ア(?)「キミはルイーザでは?」
キャ「今度は妹!? さっきはおばあちゃまで今度は……あなたは何なのよいったい!?」
ア(?)「なんと! ルイーザとは幼体のほうだったのか?」
アデリン・アンダーソンの姿をした何者かが監視カメラを見上げる。
無表情だが身振りから興奮がうかがえる。
感情がないのではなく、感情と表情筋の繋げかたを把握していないものと思われる。
(?)「記録媒体! 研究用ファイル展開! 貴重な発見があった! ニンゲン種との接触は、ワレら大いなる種族ですらも偏見という思考的不利益に陥らせる! これは深く検証すべき事例なり!」
キャロライン・ルルイエ、この隙に逃げ出し、画面外へ消える。
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