第3話 フェブラリータウンからの手紙 1

親愛なるオリヴィアへ


 旅に出てから初めてパパに手紙を出したわ。

 あなたにはこんなにいっぱい送ってるのにね。


 アデリン叔母さまが、パパにも書けってうるさくて。

 書けるようなことなんてないのに。

 パパが心配してるはずだからって。

 船でのことやインスマウスでのことなんて、うかつに書いたら余計に心配するでしょうに。

 わたしの身を心配するのか、それとも頭を心配するのかはわからないけど、きっと頭のほうね。


 アデリン叔母さま自身は別に、モードリンおばあさまに手紙を書いてる様子はないのよ。

 モードリンおばあさまは母方の祖母ね。


 アデリン叔母さまは、汽車の中でも降りてからもずっと、同じ新聞を何度も読み返しているわ。

 タイタニア号っていう船が遭難してしまったんですって。

 いったい何があったのかしら?

 まさかわたしたちが乗っていたオリンピア号みたいにわけのわからないことが起きたりなんてしてないわよね?


 乗っている人、無事だといいけど。

 でも結局は他人事。

 自分たちがこんな状況なのに他人の心配なんて――

 大人の余裕なのかしら?

 わたし、そんなふうにはなれないわ。




 わたしたちは今、フェブラリータウンってところに来ているの。

 着いたのが夜で、ホテルの看板を見つけてすぐに入ったから、町の景色だとかはまだ見ていない。

 パパへの手紙は汽車の中で書いて駅で出したわ。



 ニューヨークへ行くはずが逆の汽車に乗って、ルイーザに言われるまま、聞いたこともない駅で降りて。

 ほんと、何もかもルイーザに言われるまま。

 姉としてこれでいいのかしら?

 わたしって、ルイーザがホテルに泊まるため、汽車に乗るための身分証とお財布でしかないんじゃないの?


 今はそれでいいわ。

 この旅が終わったら、姉として、流行りの劇にでも連れていってあげるわ。

 明日、この手紙を投函したら、あとはひたすらルイーザのお供よ。



キャロラインより


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