第4話 フェブラリータウンからの手紙 1の追伸
PS.
昨夜、寝る前に手紙を書いて、夜が明けてからこれを書き足しているわ。
今朝がた、ひどい夢を見たの。
夜中に奇妙な気配を感じて目を覚ますっていう夢を見て――
ちょっとわかりにくいわね。
目を覚ましたって部分まで全部夢よ。
人間ではない何か――大きさは人間くらいなんだけど、顔の三分の一を占めるような異様に大きな真っ赤な目をした怪物が、窓にへばりついてわたしの様子をうかがってる夢。
怪物と目が合って、わたし、夢の中なのに気絶しちゃったわ。
朝になって本当に目が覚めても汗びっしょりで、しばらく震えが止まらなかった。
すごく怖かったけど、ただの夢よ。
インスマウスであんなことがあったんだから、このフェブラリータウンにだってどんな化け物が潜んでいるかわかったもんじゃないけれど、でも昨夜のはただの夢。
だってこのホテルのカーテンは白の無地なのに、夢の中のカーテンは、黒の濃淡で何とも言えないような不気味でいびつな模様をしていたの。
怪物と目が合う前、わたし、そのカーテンが怖くてたまらなかったのよ。
書いているうちにちょっと冷静になってきたわ。
ただの夢の話なんて手紙にしてもしょうがないかしら?
でも書いちゃったし、送っちゃうわね。
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