第10話 ルルイエ邸からの手紙 6と7

※便せんの上部、本来とはズレた位置に“親愛なる”と書き足されている。


たいへんよオリヴィア!


 パパがルイーザからブルーダイヤを取り上げて、テームズ川へ投げ捨ててしまったの!


 ルイーザはひどく塞ぎ込んでいるわ。

 たとえ本物のダイヤモンドじゃなくっても、おばあちゃまの形見なんだもの、当然よ。


 メイドたちの話では、ルイーザにはろくに友達も居なくって、何かあるとすぐにおばあちゃまの部屋に駆け込んで、二人きりで何時間も閉じこもってしまっていたんですって。

 そんなに仲良しだったおばあちゃまが、いきなりあんな死に方をして。

 わたしも愚かだったわ。

 呪いなんて話に簡単に踊らされて、ルイーザの心を傷つけてしまった。

 霊能者が変な死にかたをしたのなんて、あんなの、霊能者のフリをした強盗が指輪を奪おうとして、何かがどうにかなって絡まったとか、てこの原理とか、そんなことだったに決まっているじゃない!


 ルイーザはお葬式の間もずっと平気そうな顔をしてたけど、そんなわけなかったのよ。

 無理して気丈に振る舞っていただけだったのよ。


 わたし、どうしたらいいのかしら?

 パパには呪いが降りかかる前に寮へ帰れなんて言われたわ。

 でもルイーザをこのままにしておけるわけないじゃない!


キャロラインより






親愛なるオリヴィアへ


 この間は怒りをあなたにぶつけるみたいな手紙を書いてしまってごめんなさい。

 だけど今度は混乱をぶつけてしまいそう。


 ブルーダイヤが帰ってきたのよ。

 テームズ川に捨てられたのに、屋敷の屋根の上から落ちてきたの。


 魚がダイヤを丸呑みにして、その魚を鳥が捕まえて、ってことで、一応、説明はできるわ。

 最近やたらとカラスがうるさかったし。


 それともパパがダイヤを捨てたというのがウソだったのかも。

 わたしはあとでパパから聞いただけで、その場に居たのはパパとルイーザだけだったわけだし。

 でもそれにしてはパパの怯えようはとても演技とは思えない感じなのよね。


 考えがまとまらないわ。

 寮に帰ってからゆっくり話しましょう。

 またね。

 お守り、ありがとう。


キャロラインより

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