第8話 アデリンの日記(一九三〇年、七月〜八月)
アンダーソン邸の屋根裏部屋から、アデリンの従兄弟の子孫に当たる人物によって発見された。
七月二十七日。
近所のチャリティー・フェスティバルに行く。
占い小屋の女に、過去の恋愛を引きずっているのを当てられた。
水難の相がでていると言われ、お守りとして分厚い百科事典を渡された。
帰り道、混雑した橋で、後ろから誰かに突き飛ばされて川に落ちたけど、鞄の中の百科事典が浮きになったので溺れずに済んだ。
占いって、本当に当たるものなの?
着替えてからイベント会場に戻ったら、占い小屋はなくなっていた。
八月七日。
本屋の近くであの占い師と再会。
偶然だけど、ただの偶然とは思えない。
占い師の名前はジューリャ。
ジューリャに、アタシの人生に必要なのは、青く輝く石だと言われた。
思い当たるものがあるはずだって。
アタシは、知らないって言って、逃げた。
だって。
言えるわけがない。
八月十日。
占い師の名刺の住所にアタシから出向く。
ジューリャの占いによれば、アタシに幸運をもたらすはずの石は、持つべきではない人のものになろうとしているらしい。
ヘンリーの屋敷に電話。
ヘンリーは留守。
メイドと話す。
パトリシアの遺言で、ブルーダイヤはルイーザのものになる。
勢いでキャロラインに手紙。
出したあとで悔やむ。
意味のないことをした。
八月十五日。
ジューリャに本心を告げる。
ブルーダイヤがほしい。
あれはアタシが掴めなかった幸せの象徴。
アタシはキャサリンのようにもパトリシアのようにもなれなかった。
キャサリンが生きていれば、ブルーダイヤはパトリシアの死後はヘンリーからキャサリンへ渡されたはず。
ルイーザはキャサリンの不幸の象徴。
だってルイーザはアタシの姉の子供ではない。
ブルーダイヤがルイーザのものになるなんて許せない。
認められない。
ジューリャはアタシに協力してくれると言う。
どうすればいいかは水晶玉が教えてくれる。
アタシたちは水晶玉が立てる計画に従うだけ。
「気にしなくていい」
「ブルーダイヤはあなたのものになりたがっている」
「時が来ればあなたから姉の娘に与えればいい」
キャロラインに。
落ち着いてこうして日記に書いてみるとムチャクチャな話。
だけどもう、アタシの欲望は固まってしまった。
八月三十一日。
ひどい天気。
ジューリャの言葉にうなずいてしまったのは、きっとこの天気のせい。
別に大したことをするわけじゃあない。
ジューリャをヘンリーに紹介するだけ。
それだけよ。
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