イギリス編

呪いのブルーダイヤモンド

第1話 放課後のインタビュー

「表向きは、わたしのママは妹を産んだ際に出血が止まらなくなってそのまま死んじゃったってことになってるけどさ。

 妹のルイーザがママの子供なわけがないのよ。

 だって九年前よ? わたしは九歳。

 うん。ちょうど人生の半分ね。

 でもって妹は今、九歳。

 まあ、一生に一度くらいはこういう年もあるわよ。

 とにかくね、母親が臨月なのが理解できないような年齢じゃあないし、一緒に暮らしてて知らされてないとかありえないでしょ」




「パパの子ではあるのよ。パパとはあんまり似てないけどね。

 おばあちゃまにそっくりなのよ。父方の。若い頃の肖像画と瓜二つ。

 きれいな栗毛よ。

 目の色だけ違うの。

 おばあちゃまの目は茶色で、ルイーザはブルー。


 そのブルーがね、おじいちゃまにそっくりらしいのよ。

 おじいちゃまは、パパが生まれてすぐに行方不明になったらしいわ。外国でね。

 写真一枚残ってないから、わたしがおじいちゃまの姿を知ろうとしたら、妹の目を見る以外にないわけ。


 目の色以外はわからない。

 まあ、ハンサムだったらしいわよ。

 おじいちゃまの写真も肖像画も、パパが若い頃に処分しちゃったの。

 パパは自分とおばあちゃまが、おじいちゃまに捨てられたって考えてるの。

 でもおばあちゃまはおじいちゃまを信じてて、再婚の話があってもずっと断り続けてきたのよ。


 だからこそ、ね。

 おじいちゃまを長々と恨み続けてるような人のくせに、ママを裏切ってたなんて、ね」




「だって他に考えられないじゃない?

 別にママが死んだからってこれ幸いと愛人と再婚したりはしてないけどさ。


 たぶんだけど、愛人のほうが、ママより先に死んだのよ。

 それで愛人との間の娘を引き取ろうとして、不倫してたのをママに打ち明けて、争いになって……」




「ええ、そうよ。何の証拠もないわ。

 医者を買収したのよ。きっとそうに決まってる。

 わたし、金持ちの娘になんか生まれるんじゃなかったわ。


『ママはルイーザを産んだせいで死んだ』

 書類上はそう。

 これに異を唱えたせいで、わたしは実家から追放されたの」



※おそらくここで質問者であるオリヴィアが、彼女らが全寮制の学校に通っている点について触れたと思われる。



「それだけじゃないのよ!

 夏休みもクリスマス休暇も! ママのほうのおばあさまの家に預けられるの!


 ……別に嫌いじゃないわよ。ちょっと堅苦しいけど。

 アデリン叔母さまは面白い人だし。

 うん。おばあさまに厳しく育てられた反動だって本人は言ってたわ。


 そうじゃなくて、やっぱり、自分の家に帰りたいのよ。

 わたしだってパパのことは大嫌いよ?

 でもね、おばあさまの家で一日中パパの悪口ばっかり聞かされているとね、パパは本当はいい人なんじゃないかみたいに思えてくるのよ。

 わたしっておかしいのかしら?」




「パパがルイーザと二人っきりで……もちろん使用人は居るけど……どんな暮らしをしてたかなんてわたしには想像もつかないわ。

 普通の親子の暮らしでさえ、わたしには想像できないのに」





 上記のメモは、キャロライン・ルルイエのクラスメイトだったオリヴィア・ジョーンズの遺品の中から発見された。

 寮でのオリヴィアの部屋は、キャロラインの部屋の隣だった。

 オリヴィアは好奇心が強く、オカルト的なものを好む傾向があるため一部の生徒からは敬遠されたが、明るく活発で会話好きな少女だった。

 普段からキャロラインを相手に記者の真似事をして遊んでいた。

(当時の友人達の証言)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る