負けっぱなしの敗井さん、異世界でリベンジす!

嘉月抹茶

第1話 敗井さん、今までとこれから

この世に生を受けて早20年。


中学受験は大失敗して第1志望校に合格することは出来なかった。

そして、高校受験。

こちらもまた、友人と一緒に通おうと約束しあったにも関わらず私だけ不合格。

次こそは、と満を持しての大学受験。

何年も予備校に通い夜遅くまで授業を受ける生活をしてきた。

だというのに…

最早お察しの通り、医学部を第1志望校に受験したにもかかわらず、結果は何故かFランの法学部入学。

その後も、資格試験を受ければ受けた数だけ不合格という散々な結果。


やり直したいし、心機一転心を入れ替えて頑張りなんて思ったりもしたけど、なあなあのままここまできてしまったと痛感していたある日、

3年生の三谷先生のゼミの教室で友人数名とその友人の彼氏さん達と話していた。


「昨日、検定試験の解答出たじゃん?どうだった?」


派手な金色に染められている髪を一本に束ね、すこしキツい目をした女の子が話し始めた。


「ん〜、まあまあだった…かな。そういう柚那ちゃんはどうだったの?」


すると、金髪の女子、改め錫紀柚那(すずき ゆな)が意気揚々と話し始めた。


「私?5日前から始めた割には出来たよ〜、まあ、律よりは出来たかな〜」


得意そうな表情で話しかけてくる柚那ちゃんにすこしばかり内心、イライラしながらも当たり障りのない返事をして場を濁す。


そんなイライラする会話を繰り広げていると、いきなり地面が光り出し、ガラスのようなものが割れる音が響き渡った。


「きゃあっ!」

「なんなんだよ、コレェ!」

「柚那!」


各々が、何かの破壊音に耳を塞いだし悲鳴をあげたり大事な者の名前を呼んだりしている間に周りの景色が歪み出した。

机やホワイトボードがぐんにゃりとまるで下の方に吸い込まれるように消えていく。

だんだんと景色が真っ暗闇になっていくにつれて瞼が重くなり、自然と意識が消えかけていく。


そんな、夢と現実の狭間で誰かの嗤う声が聞こえた気がした。





※※※※※※※※



「………つ…りつ!」


「ん〜、まだ起きるには早いよ。あと50分」


ガクガクと肩を揺すられ、名前を呼ぶ声にうっすらと意識が覚醒する。


「なに寝ぼけた事言ってんの⁈周りを見てってば!律!」


友人である久保 雅(くぼ みやび)がさらに肩を揺さぶる速度を上げたので、意識が今度こそはっきりと覚醒した。


「おはよう雅、そしてナニコレ。舞台セット…?」


そう、そこにはまるでスケールが桁違いに多い中世ヨーロッパみたいな街並みが広がっていた。


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