第3話 明治時代のお正月
読まなくても問題ないけど気になる方向け司会紹介→https://kakuyomu.jp/works/1177354054892641004/episodes/1177354054892641022
〇初詣
巳代治「現代日本は明治神宮が初詣の人出ランキング第一位なんだね」
堅太郎「毅さんが喜びそう。現代の人々も明治大帝への敬意を忘れず……って」
(※井上毅:大日本帝国憲法を作ったもう一人。皇室典範を作った人でもある)
巳代治「いや、明治神宮に明治天皇陛下と昭憲皇太后陛下が祀られてるって知らないで詣でてる人も多いんじゃないの」
堅太郎「巳代治、それ毅さんに言うと、喧嘩になりそうだからやめてね……」
巳代治「明治神宮は渋沢栄一さんを始めとした有志委員会が動き、全国から1万人以上の国民が自発的に労力奉仕して、大正9年に出来ました。なので、明治の頃にはありません」
堅太郎「というか、明治の半ば頃までは今みたいな初詣もなかったんだよね。自分のところの氏神様をお参りしたりとか、初縁日の日に自分の家から恵方にあるところにお参りに行くとかはあったけど」
巳代治「それにしても渋沢さん、元気だよね……。あの人、1840年生まれだから、僕より17歳上のはずなんだけど」
堅太郎「大正9年……1920年だから、80歳か。僕は渋沢さんと13歳違いだから一回りくらいかな。でも、元気だよね」
巳代治「初詣の話に戻るけど、今みたいにご利益がある遠くの神社に行く! みたいなのはなかったね。それが出来たのは明治の中頃、鉄道網が発達してから」
堅太郎「その頃になると、新聞に川崎大師への初詣の様子とかが書かれるようになるね」
巳代治「川崎大師は明治32年に大師電気鉄道っていう参拝客向けの路線が開業しているんだ。今の大師線は京浜急行で一番古い路線なんだよ。しかも関東で初めての営業用電車だった。このあたり、初詣と電車の関係を感じるね」
堅太郎「明治後期になると、そんな感じで初詣がちょっとした冬の観光旅行みたいな感じになって、成田山とかも人気になるね」
巳代治「ただ、やっぱり地域によるよね。電車が走ってる場所もあれば走ってない場所もあるし。お正月は家族そろって年神様を迎えて静かに過ごしたり、少ししてから氏神様をお参りするだけの家も多かったんじゃないかな」
堅太郎「昭和のはじめになると、日中戦争があったりで、身代わり札をもらったり、戦勝祈願をしたり、また状況が変わるんだけど、まぁそれはまた別のお話と言うことで。氏神様のいない、どこか開拓地に引っ越された人たちは、その地域に出来た神社とかをお参りしてたのではないかなと思います」
〇おせち
堅太郎「子供の頃のおせち料理って、
巳代治「江戸の終わりの頃はそんなだった気がする。捧げて飾るだけの料理しかないところもあれば、食べるのと飾るの両方作っている家もあったり。地域差激しいから断言できないけど。でも、明治時代後半になると、そういう飾る風習はなくなって、食べるお正月料理があったよね」
堅太郎「おせちじゃなくて、明治の頃は正月料理って言ったね。明治30年代後半になると、今のおせち料理っぽい、三段重の正月料理が出てくるんだよね」
巳代治「一の重が数の子とごまめ。二の重が玉子、蒲鉾、琥珀糖、きんかん。三の重が牛蒡、人参、棒鱈……とか」
堅太郎「昆布巻きとか筍とか煮豆とかきんとんもあったねー」
巳代治「鶏とか八頭を甘煮したりとか葱とか鮃のぬたなんかも入れる家あった。珍しいところだと洋食をメニューで牛タンとか」
堅太郎「詳しいメニューは当時の婦人雑誌を見ると結構書いてあります」
〇それ以外のお正月
巳代治「『年賀状』は明治20年頃には定着してたね。でも元日に届くものというより、1月1日の消印が欲しくて、そこ狙いの人が多かった。だから、明治32年になると、年賀郵便が特別取扱になったんだ。〇日までに出せば1月1日の消印押すよって」
堅太郎「『お年玉』は昭和以降の習慣なので、明治の頃はありませんでした。年神様にお供えしたお餅を家長がみんなに配るのはあったけどね。後はお店の旦那が配るとかはあったかもだけど」
巳代治「あと初日の出を拝む人はいたよね。初日の出拝むと寿命がのびるって言ったりして。江戸時代の名残で銭湯に『初湯』しに行くと若返るってのもあったな。『福茶』はお正月に飲むのは『大福茶』言われたんだよ」
堅太郎「『お雑煮』は江戸後期になると武家では食べていたから、その階層だった人は食べてたんじゃないかな。江戸に住む人たちは庶民も江戸末期にはお雑煮食べていたみたいだけど」
巳代治「普及したぞーっていうのは明治後半かな。奥村繁次郎さんが書いた『名物諸国料理』という明治39年の本に明治時代後半の各地のお雑煮について書かれてるのですが、もうこの頃になると、現代と変わらないお雑煮を食べてる感じだね」
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