第2話 明治時代のクリスマス
読んでもらえるとうれしい司会紹介→https://kakuyomu.jp/works/1177354054892641004/episodes/1177354054892641022
巳代治「明治39年の新聞にはクリスマスの模様が普通に記事になったりしてます。新聞にクリスマスの話が最初に出たのは明治12年くらいかな。でも、その前から外国人居留地ではクリスマスしてたけど。明治21年の新聞記事では、横浜居留地のクリスマスの模様が出ています。慰留地の商館や銀行は休日で、横浜グランドホテルでは夜会を催してるって。まぁこの頃は一部の人だけで一般に浸透というのではないと思うのですけどね」
堅太郎「クリスマスカードはもう明治20年代にはあったね。留学組で洗礼を受けてクリスチャンになった人たちもいたし」
巳代治「東京だと明治20年代半ばにはクリスマス菓子とかも売り出されていたね」
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堅太郎「明治後半になると慰留地以外の教会でもミサをしていて、福引とか余興があったんだよね。外国人の邸宅ではお庭にクリスマスツリーを飾ったりしてたし」
巳代治「もう明治39年だと外国人やキリスト教徒じゃない家でもプレゼント用意してたよね。銀座の明治屋では銀色のモールとかクリスマス装飾が店内にされていて、綺麗だった」
堅太郎「明治屋に倣って、他の商店もクリスマス装飾してたよね。東京の人は日露戦争後は本当にクリスマスはお馴染みだったんじゃないかな。街がそういう感じだったし、日露戦争中も街は賑やかにクリスマスしていたし」
巳代治「明治39年には普通にクリスマスプレゼントの1つとしてクリスマス菓子入りバスケットとか並んでたものね」
堅太郎「あと人気だったプレゼントは、動物のおもちゃとか花とか……ドイツ製とか輸入品のおもちゃも多かった」
巳代治「ゼンマイ仕掛けのおもちゃもあったし、39年だと自動車のおもちゃとかが出てきたころだね」
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堅太郎「クリスマスケーキはもう少し後か。不二家がクリスマスケーキを作ったのは明治43年だし」
巳代治「でも、家ではもう作っている人もいたと思うよ。それに場所によってクリスマスの馴染みが違うしね。横浜とかは明治30年代半ばにはもうクリスマスが定着してたんじゃないかな」
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巳代治「ちょっと離れて僕たちの話をすると、僕は長崎の生まれだし、早くに英語伝習所に通っていたから、そこそこクリスマスには馴染みがあったと思う。10代の頃は神戸外国人居留地で、外国人の新聞社社長の元で暮らしてたから、キリスト教徒も周りにたくさんいたし」
堅太郎「巳代治が10代ってことは、明治5年(1892年)とかそんなものか」
巳代治「そうだね。明治6年にキリスト教禁制が解かれたって言われるけど、外国人はその対象じゃなかったから、その前から宣教師が熱心に布教活動してたよ。カトリックの教会では日曜にミサしてたし。そうそう、日曜学校の本にはサンタクロースのこととか書かれてたよ」
堅太郎「居留地のそばに住んでる日本人やその周りの人たちは確かにクリスマスを知るの早そうだし、神戸すごいね」
巳代治「うん。でも、日本で三番目に大きかった神戸の居留地より横浜のほうが7倍くらい大きいから、きっと影響力はもっと大きかったと思うよ。あと、東京は金子君たちみたいな外国帰りの人も多かっただろうし」
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堅太郎「僕がハーバード大学を卒業したのは明治11年(1878年)だけど、アメリカだけでなく、ヨーロッパに留学したり、視察に行ったり、確かに外国帰りがそこそこいたから、その面子はもうクリスマスのことは知ってたと思う」
巳代治「金子君もアメリカでクリスマスやっていたの?」
堅太郎「やってたよ。明治4年に團とホームステイ先でクリスマスをやることになって、ステイ先の家族に贈るプレゼントを買ったりしたし」
巳代治「そういう点では薩長の人や中央に近い人間は明治初期に今のクリスマスっぽいクリスマスをしていても、おかしくないかもね。留学した人たちも多いし」
堅太郎「でもそれはあくまで、外国文化に接することがあった人たちの話だよね。そうじゃない人たちや地方の人たちはもっと珍妙なクリスマスしてそう……」
巳代治「まぁそれはそれでネタとして面白いかもしれないよ」
※團……團琢磨。金子堅太郎と同じく福岡出身で、岩倉使節団でアメリカに留学。マサチューセッツ工科大学を卒業し、東大理学部助教授になった後、三井鉱山会長、三井総帥になる。二人の交友は長く続き、團は金子の妹と結婚し、金子の義弟になる。
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